「消費者になりきる」ことから始める、新製品・サービス開発

服装をカジュアルにすると、普段生活しているときの「消費者モード」でものを考えたり、感情を再現したりしやすくなります。
スーツを着ていて、気分だけは「仕事モード」から「消費者モード」に切り替える、というのはなかなか難しいもの。自分はスーツのほうが着慣れていてリラックスできるという人でも、まわりの人がみんなスーツを着ているオフィスで「消費者モード」になるのは難しいのです。
それは、人間の脳は環境に支配されるので、目に入ってくる情報が「スーツ姿」であれば、気分は自然と「仕事モード」になってしまうものだからなのです。

拙著「戦略インサイト」の中でも、消費者を知る、究極のゴールは「消費者になりきる」ことと書いています。そして、「消費者になりきる」環境をつくり、インサイトを見つけ出すために「インサイトワークショップ」という場を、関係者全員で持ちます。
普段はスーツ着用の企業でも、このワークショップの日だけは終日、カジュアルな普段着で参加してもらうようにしています。
そうすることで、業界の常識にとらわれない、画期的な商品やサービスが生まれる可能性が格段に高まります。競合との対比ではなく、消費者のニーズや問題を解決する、新しい商品やサービスが考えられるようになるからです。

脱スーツ・ジーンズ出勤であれば、毎日いつでも「消費者になりきる」ことが、できやすくなります。
脱スーツ・ジーンズ出勤は、日本企業が、消費者の気持ちやニーズをしっかりつかみ、モノづくりに活かす「マーケティング・カンパニー」になっていく、その端緒になるかもしれないと、ひそかに期待しています。