御社は、クレーム処理中の顧客に対してDM発送を止められますか?米国シカゴで開催された、セールスフォース・ドットコム主催のデジタルマーケティング/eコマースイベント「Connections2018」。展示会場は、セールフォースではおなじみとなったアウトドアをイメージしたデザイン

分断した顧客データと部分最適の組織が
企業と顧客の溝を深める

 買ったばかりのマイカーが故障続きで、販売店の営業担当者にクレームを入れているときにも、自宅のポストにはそのメーカーから「試乗のご案内」のDMが呑気に届いている。あるいは、ネットで商品を購入した後に、検討段階で調べていた同じ会社の別の商品のバナー広告が、どのサイトを見ても付きまとう。まるで自分の選択が間違いだったと言わんばかりに…。

 このような経験は、誰でもしたことがあるだろう。

 一方で、企業に対して「御社は顧客のことを最優先に考えていますか?」と質問すれば、ほぼ間違いなく「はい」と返事が返ってくる。多くの企業が顧客志向、顧客中心を宣言していながら、増え続ける顧客との接点に対応できていない。なぜなのか。

 グローバル企業のデジタル広告部門やデータ・マネジメント・プラットフォーム(DMP)の開発企業でリーダーを務めた経歴を持ち、現在はセールスフォース・ドットコムでマーケティング製品のチーフ・ストラテジー・オフィサーを務めるジョン・スアレス・デイヴィス氏は、「消費者と企業の接点は多岐にわたり、それぞれの担当部署がデータを収集しています。ですがその情報の管理がバラバラに分断され、いわゆる“サイロ”の乱立が起きています。その結果、消費者の体験は一貫性のないものに陥っています。消費者との接点で集めたデータは、1箇所に集める必要があるのです」と説明する。

 しかし現状は、企業が保有している顧客データは統合とは程遠い状況にある。同社の調べでは、平均的な企業は平均して39もの顧客との接点を持っており、それぞれが分離独立しているという。

 単にデータが分散しているだけでなく、さらに根深い問題がある。それぞれのデータが部分最適なKPIで運用されていることだ。消費者から見ると、同じ企業に対して登録の時期も内容も違うデータが複数あり、各データの登録先の事情で自分に次々とアプローチしてくることになる。現場が頑張れば頑張るほど、顧客にとってはおせっかいだったり、カチンとくるものになりかねない。

 冒頭の話題に戻ると、顧客データが分断されている状況下で、トラブル対応中の営業担当者が、「その顧客へのDMを止めて!」と叫んでも、DM部門は手元のリストの相手に忠実にDMを送り付けることが仕事。他部署の指示で簡単にはストップできない。こうして、サイロ化された顧客データの一貫性のない運用は続いていく。