2003年から1年半、ハイテク業界がその動向を見守ったのが米OracleによるPeopleSoftの買収だ。PeopleSoftを共同創業したAneel Bhusri氏とDave Duffield氏がその後立ち上げたのが、人事や財務管理をクラウドで提供するSaaSベンダーであるWorkday(ワークデイ)だ。
Workdayは成功している。その証拠に、OracleのLarry Ellison氏は同社を「ライバル」と公言してはばからない。そのWorkdayが日本市場へのフォーカスを強めている。今年6月末に来日した、CEOのAneel Bhusri(アニール・ブースリ)氏に話を聞いた。

ワークデイがセールスフォースから学んだこと――アニール・ブースリ ワークデイCEOに聞くWorkdayのAneel Bhusri CEO。日本で議論が進む働き方改革についてアドバイスを求めると、「特にPeopleSoft時代は働きすぎだったが、年をとってからワークライフバランスがいかに重要かがわかった。仕事は短距離走ではなくマラソンだ。自分のケアができる時間が必要」と、自身の働き方の経験も含め語った

――Workday創業の理由は? どのような企業が導入しているのでしょうか?

Aneel Bhusri氏(以下・Bhusri氏) Workdayは、私と共同創業者のDave Duffield(現Workday会長を務める)で創業した。Daveとはそれ以前にPeopleSoftを立ち上げた仲だ。

 Salesforce.comがCRMをクラウドに移行させたのを見て、ERPでもこれができると思った。立ち上げは2005年、ERPの中でもまずは人事と財務管理にフォーカスした。クラウドに加え、Amazon、eBay、Yahoo!のようなコンシューマー向けのインターネットアプリケーションのユーザーインターフェイスを、業務アプリケーションにもたらしたかった。そこで、スクラッチから(最初から)作った。最初の4、5年は注目されなかったが、その後クラウドが離陸し、自分たちが信じてきたことが受け入れられるようになった。

 Salesforce.comの創業者兼CEOのMarc Benioff氏とは公私共に親しく、創業時に支援を受けており、“早期にたくさんの営業担当を雇え”というアドバイスをもらった。我々の成長は5、6年前のSFDCと似ている。規模も当時のSFDCと同じぐらいだ。

 現在7000人の従業員がおり、1500の多国籍企業を顧客に数える。このうちの約140社がFortune500企業だ。日本では、日産自動車、ファーストリテイリング、ソニー、日立製作所がグローバルベースでWorkdayを使用中か、使用を計画している。日本はまだ新しい市場だが、とてもエキサイティングな市場だ。

 Workdayはスタート当初から、大規模な多国籍企業にフォーカスしている。理由として、PeopleSoftでこれら大企業がどのような機能を欲しているのかを熟知していたことがある。また、大企業が抱える課題は最も複雑で、これを解決できれば全ての規模の企業の課題を解決できる。

働きやすい会社の米国18位

――ここ数四半期、サブスクリプション(利用期間に応じた料金支払い)の売り上げが前期比40%以上のペースで増加しています。成功の背景は?

Bhusri氏 2012年のIPO時、売上高は2億ドルを上回る程度だったが、2017年は20億ドルを超える見込みだ。急速に成長している。

 Workdayのモデルはシンプルで、素晴らしい製品を構築し、従業員に働きやすいと思ってもらえる環境を提供すること。ハッピーな従業員は、顧客を大切にする。すると顧客満足度が高くなり、満足した顧客が最高のセールスパーソンとなって別の顧客を引き寄せてくれる。

 実際、Workdayは米国では働きたい会社18位に、アイルランドでは1位となった。