米国セールスフォース・ドットコムは、今会計年度通期の売上高が100億ドル(約1兆1000億円)に到達する見通しを発表している。企業向けクラウドアプリケーション専業企業では初の快挙だ。成長を続ける同社の次の目標は何か。9月に来日したキース・ブロックCOO(最高執行責任者)に聞いた。

セールスフォースは他社と何が違うのか

――セールスフォースに入社されて約4年ですが、前職のオラクルや他のIT企業とは、何が違うのでしょうか。

セールスフォースが年商100憶ドル達成をまだ“第2章”と言う理由キース・ブロック(Keith Block)
Vice Chairman, President and COO

米国カーネギーメロン大学で科学修士号(経営および政策分析)および学士号(情報システム)を取得し、 カーネギーメロンのハインツ・カレッジ(大学院)を卒業。コンサルティング会社を経てオラクルに入社、以来26年間オラクルに在籍し、北米地域のセールスおよびコンサルティング担当エグゼクティブ・バイスプレジデントとして、1万1000名、売上数十億ドル規模のビジネスユニットを作り上げた。2013年にセールスフォース・ドットコムの副会長兼社長に着任。2016年に同社COOに就任し、セールスフォース・ドットコム全体のオペレーションを統括している。
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キース・ブロックCOO(以下略) セールスフォースは、どのIT企業とも似ていない、特別なカルチャーを持つ会社です。

 弊社は「カスタマーサクセス=顧客の成功」のために創業し、現在まで、その目的を中心において事業を成長させてきた企業です。今では世界に約3万人以上の社員がいますが、全員が常に自分の仕事が顧客の成功につながっているのかを測りながら活動しています。他の企業は事業を測るときに他の指標を使っていると思いますが、セールスフォースは「顧客の成功」その一点に絞っています。これが最大の違いです。

 顧客を支援するため、私たちは創業以来一貫してCRM(顧客管理システム)に対して“レーザー光線”のようにシャープにフォーカスして事業を続けてきました。他のソフトウェア企業は、例えばERP(経営資源計画)やデータベースといった様々な製品を用意していますが、セールスフォースは常にCRMを基軸にサービスを考え、そこからブレていません。

 顧客が起点ということに加え、テクノロジーの企業として私たちが最近話しているのが「第四次産業革命」です。これは、クラウド、モバイル、ソーシャル、データサイエンス、IoT、AIなどの新しいIT技術がもたらす社会の変革です。これらの技術によってビジネスには新しいチャンスとイノベーションが生まれています。

 多くの企業のCEOなど経営トップは、この変革期を理解しており、現在の事業基盤が安泰のまま繁栄が続くとは考えていません。産業構造の変化を生かすことでしか成長をつかめないことを理解しています。私たちにとっても、顧客企業の成長に歩を合わせて自らも成長していくことを目指しています。

――日本企業の経営者ともよく話をされるそうですが、どんな印象を持っていますか。

 今回の来日でも日本企業の何人かの経営者の方とお話ししましたが、2年前に同様のミーティングをした時と比べても、その内容は大きく様変わりしています。最も大きく変わったのは、経営者の新技術に対する姿勢が、ますます前向きになってきたことです。

 また、少し前にサンフランシスコのセールスフォース本社で、日本の大手製造業のCEOとお話をしました。その企業はB2B(企業向け製品)の事業を行っていますが、そのCEOは、顧客の顧客である消費者が、何を求めているかを知ることが非常に重要であると語っていました。B2Bのモデルの企業でも、B2Cのことを一から理解しなければいけないと考え始めた経営者が多くいることを実感しています。