「どうすれば、一生食える人材になれるのか?」
「このまま、今の会社にいて大丈夫なのか?」
ビジネスパーソンなら一度は頭をよぎるそんな不安に、新刊『転職の思考法』で鮮やかに答えを示した北野唯我氏。もはや、会社は守ってくれない。そんな時代に、私たちはどういう「判断軸」をもって、職業人生をつくっていくべきなのか。
今回は、「誰も教えてくれない転職の作法」を北野氏が解説する。

転職エージェントは「先に接点を持った会社」から儲かるモデル

転職活動を始めたら、多くの人がやることの1つは「転職エージェント」に登録することです。エージェントからのメールを受け取り、オフィスを訪れると、まず、キャリアアドバイザーと呼ばれる「相談役」の人が現れます。あなたは、次の仕事に求める希望を伝えます。すると早速、案件を紹介されます。具体的には最近であれば、求人倍率が高い、医療系やIT、サービスなどを勧められることが多いでしょう。(詳しくは下図を参考ください)

業界別の求人倍率と平均年収の推移(著者作成)
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ですが、断言します。もしもあなたが「自分で今後のキャリアを設計していきたい」と思うのであれば、転職エージェントの提案の中だけで選ばないようにしてください

なぜでしょうか?

そもそも採用には5つのチャネルが存在し、価格が異なる

北野唯我(きたの・ゆいが)兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。その後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年ハイクラス層を対象にした人材ポータルサイトを運営するワンキャリアに参画、サイトの編集長としてコラム執筆や対談、企業現場の取材を行う。TV番組のほか、日本経済新聞、プレジデントなどのビジネス誌で「職業人生の設計」の専門家としてコメントを寄せる。

転職する立場からすれば、企業がどんな手段で人を採ろうが、大差がないように見えます。私もかつてはそう思っていました。ですが、実際に自分が「採用する側」に回ってみると、採用活動は「どの方法で人を取るか」によって大きくコストが異なることに気づきました。具体的には、採用には5つの方法が存在しています。

1.ヘッドハンティングを受ける

2.転職エージェントに登録し紹介を受ける

3.ダイレクトリクルーティング型のサービスを使う

4.SNSなどマッチングサービスを使う

5.直接応募、または友人から紹介してもらう

そして、それぞれは「コスト」が違います。具体的には、上から順番に「金がかかる順番」になっています。たとえば、一番上の「ヘッドハンティング」はもっとも金がかかる手法です。たとえば年収1000万円であれば、数百万から1000万円かかるようなイメージでしょうか。年収に「XX%」をかける形で金額が決まります。一方で、一番下の「直接応募・友人からの紹介」の場合、お金がまったくかかりません。紹介元となる社員への謝礼金を除けば、ほとんどの場合ゼロ円です。

となると、あなたがもし賢い採用担当だったとしたら、当然チャネルを「使い分ける」はずです。

具体的には、わざわざ「お金をかけなくても採れるような人」はヘッドハンティングや転職エージェントではなく、もっと単価の安い方法を使うはず。一方で「ヘッドハンティングや転職エージェント」は、金をかけてでも採りたい人に絞るでしょう。このように「付加価値の低いところは金をかけずに、付加価値の高いところは金をかける」はずです。

これを、仕事を探す人の立場、つまり、あなたから見るとどうなるでしょうか?

もしあなたが「極めて優秀な人物」や「高い実績を出した人物」であれば、エージェントは本気になって、素晴らしい案件を紹介してくれるはずです。しかし、もしあなたが「ほどほどの人物」で「普通の成果」を出してきたにすぎないのであれば、企業からすると「わざわざあなたに高い金を払って雇う理由」がないわけです。それでも高いフィーがかかるエージェントを使わざるをえない何らかの理由がある。そう考えるほうが自然です。転職エージェントがやたら強く推してくる会社は、むしろ注意したほうがいいのです。

伸びる企業ほど「リファラル採用」がうまくいっている。あなたは例外か?

もう一つ、転職エージェントがやたら推してくる会社を注意した方がいい理由は、リファラル採用や、直接応募では人が採れていない可能性があるからです。リファラル採用とは、社員の紹介による採用です。Aさんが、Bさんを紹介してくれた、というようなケースです。

というのも、そもそもですが、本当に優れた会社には、勝手に人が集まってくることがほとんどです。たとえば、少し前のメルカリのようにあえて「社員紹介メイン」で、人員を拡大していくケースがわかりやすいでしょう。リファラル採用は、費用が安いのに加えて、その会社のカルチャーにフィットすることも担保されています。かつ、「優秀な人が紹介する人は優秀」という理屈も働きます。

これは自分の身に当てはめてみても、しっくりくる話です。もしあなたが「今の会社にめちゃくちゃ満足している」として、友人や後輩・先輩で転職を考えている人がいたとしたら、紹介したいと思いませんか? 就活生に「自分の会社をおすすめする」リクルーターのようなイメージでしょうか。優れた企業はこのように、社員が自然に評判を作り、新しい社員を呼んでくるサイクルができているケースがほとんどです。

反対に言えば、転職エージェントを使いまくるのは「リファラル採用がうまくいっていない」可能性があり、リファラル採用がうまくいっていない=「働いている人の満足度が低い」かもしれない、ということです。これが転職エージェントがやたら推してくる会社を注意した方がいい理由のもう1つの側面です。

自分がやりたい業界・業種が決まっている場合「自分で調べること」を忘れるな

ではどうすればいいのか?

結論をいうと、SNS型のサービスや、口コミサービスで「自分で調べること」を忘れないことです。具体的には、Wantedlyや、Vorkersなどのサイトがおすすめです。これらのサービスを使って(1)自分のやりたい業種や職種を検索、(2)その企業のブログやSNSを見て詳しくみる、(3)その中で興味がわいた企業に「実際に会ってみる」の3段階で進めていくことをおすすめします。

「そんなことして、大丈夫なのかな?」とあなたは思うかもしれません。しかし、ほとんどの「伸びている会社」では常に、「いい人がいれば採りたい」というニーズを持っています。したがって、HPやSNSサービスなどを使って、ドアをノックしてきた場合、話を聞いてくれることがほとんどです。

加えて、上記のサービスは「転職先のダブルチェック」にも使えます。あなたが、面接の場で興味をもった企業があった場合、その企業を上記の2つのサービスで検証するわけです。さらに突っ込んだ企業の見分け方は書籍『転職の思考法』に譲りますが、少なくとも、こうすれば「本当に働きやすいか?」などの検証ができます。

人材マーケットを俯瞰している身でないと、なかなか「自分で調べて、応募する」という選択肢はでてこないかもしれません。ですが、なんでも「ググれる」時代。自分で調べるという選択肢をぜひ、持ってみてはいかがでしょうか。