近年、性別、年代、業種を問わず、ビジネスメールやマナーを学ぶ人が増えているという。なぜいま、ビジネスパーソンはマナーを学ぶのか?ビジネスパーソンがこぞってマナーを学ぶ理由と現状を取材した。

なぜいま、ビジネスパーソンはこぞってメール術を学ぶのか?

 近年、実際に会わずにメールのみでやり取りすることも増え、「どんなメールを書くか」が今まで以上に大事になってきた。それにともない、インターネット上には「メールの掟」なるものがあふれてきている。しかし、古いビジネスマナーの転用や自分流の考えを押し付ける言葉狩りに近いものも多く見られるのも現実だ。

 かつて「日本語の乱れ」の代名詞のごとく扱われてきた「ら抜き言葉」も、もはや以前ほど取り沙汰されない。それどころか、文化庁が発表した2015年度の調査では、「ら抜き言葉」を使っている人が多数派になったそうだ。マナーや言葉遣いは時代とともに変化しており、正解を探すだけで時間を浪費してしまう。

 そんな流れを受け、書店の店頭では、『気のきいた短いメールが書ける本』(中川路亜紀/ダイヤモンド社)、『大人の語彙力ノート』(齋藤孝/SBクリエイティブ)、『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(吉田裕子/かんき出版)など、メールや語彙力関係の本が並び、いずれもベストセラーとなっている。また、本だけでなく、ビジネスマナーや言葉遣いなどを学ぶビジネスパーソン向けの講座も多数開催され、いずれも人気のようだ。

 なぜいま、ビジネスパーソンはこぞってメール術や語彙力を学ぶのか?メール術を身につけることは、仕事においてどんなメリットがあるのか?まずは、ビジネスパーソンを対象にマナー講座を主催しているANAビジネスソリューションの担当者に話を聞いた。

 「近年、ますます需要が高まっていると感じます。お一人から参加していただけると公開講座の受講者数はもちろんのこと、企業様への講師派遣のご用命も年々増加の一途にあります」(同社・研修企画チーム・川上美佐子氏)。また、受講者の業種も以前に比べて多様になっているという。

 LINE、SNSなどの普及により、ビジネスメールはおろか、PCメールのやり取りの経験すらないまま社会人になる学生もいるらしい。メールを送る際にいきなり用件から始めずに、「お世話になっております」と書くことはもちろん、社名、役職、○○様、と本文に宛名を書くことすら知らない人も多いというから驚きだ。

 ほとんどのコミュニケーションを、携帯に登録している特定の相手とだけ行う世代にとって、立場が異なる相手とのコミュニケーション術は、講座で初めて知るビジネスマナーのひとつなのだ。実際、20代の受講者から、「メールの書き方が格段に良くなり、職場で上司から褒められた」という感想も届いたという。

 また、ビジネスメールの送り方だけでなく、語彙力そのものにも不安な点があると同社・研修営業チーム・細川実穂氏は言う。たとえば仕事の休憩時間ひとつとっても、以前なら同僚や先輩との年齢や立場を超えたコミュニケーションもあったが、今は個人がスマホをいじっているだけで休憩時間が終わり、社員同士のコミュニケーションが減ってきているという。それにより、若者の語彙力が落ちてきたという側面もあるのではないだろうか。

 例えば、失礼を詫びる文例ひとつとってみても、

「昨夜の失礼をお詫び致します」
「心よりお詫び申し上げます」
「みなさまを不快にさせてしまい、たいへん申し訳ありませんでした」
「自分の未熟さが引き起こしたことと深く反省しております」
「自分の浅はかさに恥じ入っております」
「このたびの数々の失礼につきまして、慎んでお詫び申し上げます」
「このたびはお詫びの言葉もございません。どうかご容赦ください」

 など、相手により、TPOに合わせ、多くの言い回しがある(『気のきいた短いメール』より)。

 基本的な文例を知っていることはもちろん、立場やTPOに応じて言い回しを使いこなすことができれば、お詫びの気持ちがきちんと伝わるうえに、「しっかりしている」と評価があがることすら期待できる。メールにはそれくらいの力があるのだ。