若手だけじゃない、50代がビジネスマナーを学ぶ理由とは?
意外なのは、ビジネスメールやマナーが身近でない20代前半の世代だけでなく、30代以上の世代もメール術やマナーを積極的に学ぼうとしている点だ。「ある30代の受講者は、新入社員のOJTを担当することになり自分の言葉遣いやビジネスマナーを改めるために申し込んだとおっしゃっていました。また、役職が上がり立場が変わったことをきっかけに、相応の知識を学ぼうとご受講くださる50代の方もいらっしゃいます」(前出・川上氏)。
確かに、どんなに仕事ができたとしても、メールの文面に間違った日本語や敬語が使われているだけで、仕事における信頼性や評価は一気に下がってしまう。実際に、「今まで我流でやっていたが、受講して初めて自分の日本語が間違っていたことに気付いた」という声もあるという。
年齢や立場にかかわらず、研修を受けてすぐにその効果を感じられる機会は少ないかもしれない。しかし、きちんと正しい知識を学んだことによって自信を持つことができる。そして、自信がつくと不思議なことに表情や立ち居振る舞いも堂々としてくる。さらには仕事に向かう姿勢にも積極性が表れてくるという。メールひとつでも、自分の意思で学ぶことによって、仕事に対するモチベーションの高さが変わるのだ。
「今さら」ではなく、「今も」、「今からでも」学ぶという姿勢こそが、仕事で評価される大きな要因といえるだろう。
丁寧なだけではNG。適切なビジネスメールとは?
「実は私も読んでいます」と川上氏が自分の『気のきいた短いメールが書ける本』を見せてくれた。仕事柄、丁寧なメールを書くことはできるが、場合によっては簡潔なメールが求められることもあり、そんなときに本書が重宝するという。
同書は啓文堂書店のビジネス書大賞で2018年の大賞を受賞。啓文堂書店渋谷店の吉田隆明店長、ビジネス書担当の嶋崎光雄氏は、「以前に比べて、メール術や語彙力などの本は圧倒的に増えました。特に、美しい日本語の書き方といった実用的な内容ではなく、ビジネスに特化したメール術の本が増えたのが特徴的です」と言う。
夕方になると、仕事帰りの若手ビジネスパーソンがよくビジネスマナー・敬語の棚の前で本を探しているという。フラッと書店に立ち寄って、たまたまメールのコーナーに行くというよりは、仕事に生かしたい、ビジネスに役立てたい、など目的をもって来店している様子で、同店ではビジネス書のコーナーとしては珍しく女性客が多いのも特徴的だそうだ。
「改まって文章を書くという機会が減っている今、いざ何かを書こうと思うと書き方や形式が分からず、関連書籍を読んで勉強しているのかもしれませんね」と嶋崎氏。
20代の若者にとっては、きちんとしたコミュニケーション習得のため、50代のベテランにとっては、堅苦しすぎないコミュニケーション方法を学ぶため、「馴れ馴れしくなく、よそよそしくない」メールを書くべく、幅広い年代のビジネスパーソンがこぞってメール術を学んでいるのだろう。
メールはいまや、社外コミュニケーションはもちろん、社内コミュニケーションを円滑にする大きな一助となっており、性別、年代、業種を問わず、勉強している人が多いのもうなずける。メール術を学ぶことによって仕事の評価も一変するなら、学ばない手はない。
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