きっかけは決算を前に、監査法人側から、約1年前に取得したばかりの建物について「減損すべきだ」と言われたことだ。将来を見据えた資産取得のつもりだったが、いきなり減損をし、費用として損失を計上するとなれば、そもそもの経営判断が誤りだったということになりかねない。

 経営陣は、すぐに利益を生み出せなくても将来、経営の柱に育てるための資産取得は、目に見えぬ価値があると判断していた。

  この件で監査法人と意見が対立したのをきっかけに関係が悪化。しかも、監査法人側から「業務量が増えているので契約を続けるなら来期の報酬を2割値上げしてほしい」と求められた。

 経営陣は「経費削減の折にとんでもない」と反発。両者の溝はさらに拡大した。結局、監査契約を来期から解消することで合意し、東京証券取引所の基準に沿って適時開示も行った。

 ベテランの公認会計士によると、こうした交代は上場企業と監査法人が「蜜月」と呼ばれた10年ほど前にはそう多くはなかったという。

 会計処理の判断は、企業の経営判断を尊重した上で監査法人の現場担当者がある程度は自分の裁量で決めていたし、報酬の値上げも急激ではなかったため、対立やトラブルに発展することはなかった。

 ところが最近は違ってきている。

監査法人からの
契約解除の申し出が増える

 金融庁が公表している資料からも上場企業と監査法人の対立の増加が読み取れる。

 昨年夏の「29年度モニタリングレポート」によると、「会計監査人の異動」の件数が、13年(7月~翌年6月)~15年は年100件ほどだったのが、16 、17年は2年続けて130件を超えている。17年7月から今年5月までの数字を考えれば、18年も年間130件に迫りそうだ。
 
 監査法人が交代するのは、企業か監査法人のどちらかが契約解除を申し出た場合だ。

 形式的には監査契約は企業が監査法人を選んで結ぶため、解約となれば、企業側の意思と見られがちだが、最近は監査法人側から「来期は貴社とは契約しない」と企業側に通告するケースが多いという。

 大手監査法人を対象とした調査(複数回答)では、交代理由の第1位と2位は、それぞれ「監査報酬」(26件)と「監査チームに対する不満」(23件)だったが、「監査人からの契約解除」(19件)も第4位で、2つの理由に負けず劣らず多い。