6月19日、カジノを含む「統合型リゾート(IR)実施法案」が衆議院の本会議で、与党や日本維新の会などの賛成多数で可決され、参院へと送付された。カジノに対する批判や懸念がいまだ根強いなか、なぜ政府・与党は法案成立を急ぐのか。その背景や、候補地争いの最新の動向について、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏に聞いた。(取材・文/清談社)
法案の唯一の目的は「カジノ」
拙速に通過させる法案の問題点
「統合型リゾート」と聞けば、いかにもイメージの良い高級リゾートが整備されるかのような想像がはたらく。しかし、この法案の目的は「日本で『カジノ』を合法化する」以外の何者でもない。
政府・与党は、増加する外国人観光客をターゲットにしたカジノ建設を数年前から熱心に推進し、参入を狙う業者や誘致したい自治体も積極的に動いていた。
だが、カジノはもちろんギャンブル。依存症への懸念もあり、野党や国民世論からの反対も強く、過去には何度も法案自体が頓挫しかけていた。実は、こうしたカジノへの批判をかわすためにできたのが「統合型リゾート(IR)実施法案」だという。
「批判を和らげるために、カジノ設置という直接的な表現を避け、指定した地域一帯をリゾート地域として整備し、そこにカジノも含まれる形の法案に変えたのです。ある野党の幹部は、このやり方を『反対や心配の声をかわすための文言のごまかし』と解説しています」(鈴木氏、以下同)
今回の法案では、カジノや国際会議場、ホテルなどを一体化した「統合型リゾート」の設置が、全国で3ヵ所まで認められる。また、ギャンブル依存症への対策として、日本人と国内居住の外国人が利用する際には入場料6000円を徴収し、「週3回かつ28日間で10回」という入場制限も設定された。注目のカジノの運営については、新設される行政機関「カジノ管理委員会」が事業者を選定し、管理することになっている。
「10万円や20万円ならともかく、ギャンブル好きにとって6000円の入場料が果たして抑制になるのかどうか。『週3回、28日間で10回』という入場規制も同じです。新設される『カジノ管理委員会』も、どこまでの権限を持つか不透明。議論すべき問題点はまだまだあります」
さらに、法案成立後に政府の裁量で決まる項目が331項目と、非常に多い点も問題視されている。
「前出の野党幹部も『ときの政府が好き勝手に中身を決められることになり、抜け道がたくさんあって危険な法案だ』と懸念していました」