なぜ通行人の顔に「ぼかし」を入れるテレビ番組が増えたのかPhoto:PIXTA

 最近、テレビを観ていて気になることがある。番組内に映り込んでいる通行人の顔に「ぼかし」が使われていることが、とかく多い。かつてはなかったのに、いま、なぜなのか。写真と映像は形式こそ異なるが、「伝える」「表現する」という点で共通項が多い。アサヒカメラ特別編集『写真好きのための法律&マナー』では、テレビの世界から肖像権の問題について考えるべく、日本テレビの元ディレクターで上智大学文学部の水島宏明教授に話を聞いた。

なぜ通行人の顔に「ぼかし」を入れるテレビ番組が増えたのか水島宏明/1957年生まれ。日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクターとして貧困問題や環境・原子力のドキュメンタリーを多数制作。2016年から上智大学文学部新聞学科教授。

 テレビの世界でも映像をキャプチャーされて、インターネット上であることないことを書き立てられてしまう悪い現象が加速しています。

 たとえば、以前、NHKのニュース番組の特集「子どもの貧困」が問題になりました。経済的困窮を理由に希望する専門学校への進学を諦めている女子高生が登場したのですが、部屋に人気アニメのDVDなどがあったことで、「貧困ではない」といった批判が殺到しました。

 貧困は一歩間違うと偏見や先入観が強いテーマ。ちょっとしたことで意図せぬ方向へ話が進んでしまうリスクがあります。彼女の場合は将来の選択肢が限られている点で、明らかに貧困状態にあります。

 番組ではその説得材料として、パソコンのキーボードだけを買って練習する姿といったシーンが積み上げられていました。しかし、DVDが映っていたのに説明されていないことが視聴者に突っ込まれたわけですね。逆に言えば、DVDなどは映さないようにしたほうが、取材に応じた彼女のためになったし、細かい点に配慮すべきでした。