もっとも、よくある街の風景を映すにしても、リスクがゼロではない時代です。歩行者を撮る場合、テレビ局のロゴをつけたカメラを用意して堂々と撮るのが基本。そういうふうに撮られた映像は番組で使ってもいいという暗黙の了解があります。

 ただ、微妙なケースもあります。たとえば、暑い夏の日に汗をダラダラ流してひどい形相になっている人。ワールドカップの試合が早朝まであったせいであくびをしている人。ニュース番組などではよく見るシーンですが、この辺の表情のアップはあまり人にさらされたくない。あまり極端にアップにしません。

 また、違法行為やマナー違反に当たる場合は、モザイク処理されることが多いです。たばこのポイ捨てや禁煙場所での喫煙、自転車の二人乗りなどは映像が出ることで処罰されたり、指弾を受けたりするリスクがあるからです。

 報道番組でモザイク処理されるのは、事件の容疑者の自宅周辺の映像でしょう。近隣住民にとっては資産価値が落ちるリスクがあります。

 ただ、最近は商店街などの通行人をぼかす映像も一部の番組には出てきています。判断基準は番組で異なりますが、バラエティー番組や情報番組は特にシビアです。映り込んだ人からクレームが来るのを避けているからです。過度に最初からリスクを避けようという傾向は行き過ぎだろうとは思います。クレームが来ても「あなたを撮ったわけではなく、映り込んだだけ。撮影時になぜ言ってくれなかったのか」と答えればいいのですが。

 リアリティーはあるほうがいい。しかし、ぼかしたり、モザイク処理をしたりするほど、リアリティーはなくなる。リアリティーとクレームのせめぎ合いが番組の制作現場にはあると思います。その線引きの厳格な基準はないのですが、現実的にはクレームが来てどう対処するかというリアルな判断しかありません。

 大切なのは、その映像をどういう意図で使うか。主観は千差万別ではあるものの、一般常識として容認できるかで、おのずと線引きされていくのではないでしょうか。(談)

(構成・アサヒカメラ編集部)

※アサヒカメラ特別編集『写真好きのための法律&マナー』から抜粋

AERA dot.より転載