だが、それから数ヵ月、私は別の取材で、かなり頻繁に中国人と都内のさまざまな中華料理を食べに行く機会を持つことになり、「やはり、在日中国人が行く中華料理店と日本人が行く中華料理店はぜんぜん違う」という確信を持った。出身地による違いや、味の好み、偶然の出来事という問題だけではない、他に別の理由がある、と思ったのだ。

在日中国人コミュニティーの情報網と
日本人の情報網は全く違う

 それは、在日中国人コミュニティーの情報網と、日本人の情報網は全く違う、ということと関係がある。

「そりゃ、そうでしょう?」と思う人もいるかもしれない。だが、日頃、会社や学校で机を並べている同僚の中国人と自分との間に、かなりの情報格差がある、と認識している日本人はどれくらいいるだろうか?

 日本国内に住んでいて、海外事業に関係なくても、ビジネスの場で顔を合わせる中国人は年々増えている。日本に住んでいる中国人ならば、流暢に日本語を話し、私たちとの間の会話に問題はないし、きっと同じような情報を共有しているはず、と思い込んでいるのではないだろうか。

 ところが、実際はそうではない。

 中国国内にいるのと同様、日本に住む中国人もウィーチャット(中国のSNS)を駆使している。ほぼすべての情報網がウィーチャット上で行われている、といっても過言ではない。日本に住んでいながら、彼らはウィーチャットを介した「中国人の世界」で繋がっている。

 日本人がフェイスブックやLINEを使い、暇つぶしや連絡手段にしているのとは比較にならないほど、彼らはウィーチャットで重要なやりとりを行っており、ニュースや情報のチェック、家族や友だちとの連絡もすべてウィーチャットだ。

 当然、「おいしい中華料理店についての情報」が流れてくるのもウィーチャット。「池袋にこんなおいしい火鍋屋ができた」とか、「銀座の〇〇では希少な中華食材の〇〇が食べられる」など、マニアックな情報も四方八方から流れてくる。中国人の情報網といえば、ひと昔前まではクチコミだったが、それが今では100%ウィーチャットに移行している。彼らは日本語を十分理解しているが、日本のマスコミに流れる中華料理店の情報には影響されていない。