M0

 中国のSHANLING(シャンリン)というメーカーが開発したデジタルオーディオプレーヤー「SHANLING M0」が日本で発売された(国内販売は伊藤屋国際)。実売価格は1万5000円前後。

 幅40×奥行き13.5×高さ45mm、重量38gという、極小・軽量のオーディオプレーヤーなのだが、興味を惹かれたのはそこではない。

M0
指でつまんだところ。もはや女性向けのタフネス腕時計の本体より小さい

 実は筆者はこのメーカーの従来モデル「SHANLING M1」に触ったことがあるのだが、価格(当時の実売価格は1万3000円ほど)に対してその音質が結構よく、かつ多機能で、無茶苦茶コスパのいいプレーヤーだなと思った記憶がある。

オーディオプレーヤー
従来モデルの「SHANLING M1」

 M1のサイズも極小で幅50×奥行き13×高さ60mmとなるが、それでもM0よりは大きい。つまり、最新のM0は小型化されているのだが、それで音質はどうなったのか興味があったのだ。

小型化しながらもスペックは進化した「SHANLING M0」

M0
M0
M0はブラック、ブルー、チタニウムグレー、パープル、レッドの5色展開だが、それぞれのカラーの専用ケースが同梱される
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M0
今後日本での発売を検討しているクリップケースに装着。胸ポケットなどに装着できる

 M1もM0もハイレゾ音源対応プレーヤーであるのは同じで、FLACやDSD(64/128)の再生ができる。ただ、M1は192kHz/24bitまでなのに対して、M0は384kHz/32bitまで(WAVやDXDなど)に対応できるようになった。

 そもそも、M1のDACは旭化成エレクトロニクスの「AK4452」を採用していたが、M0ではESSの「ES9218P」に変更されている。

 どちらも32bit DACで、前者はヘッドフォンアンプなどで採用されているケースが多く、後者はLGのスマートフォン「V30/V30+」に採用されているが、コアパーツが変更されているため音質は大きく異なりそうだ。

M0
M0
Bluetoothの設定。LDACやaptXに対応する

 Bluetoothの仕様も若干異なる。M1はBluetooth 4.0で低遅延のコーデック「aptX」に対応していた。一方、M0はBluetoothが4.1となり、aptXに加えてソニーの高音質コーデック「LDAC」もサポートしている。

 ちなみに両機種とも、Bluetoothの送信だけでなく受信にも対応(aptXは送信のみ)。スマホなどの音楽を本プレーヤーで受信して、イヤフォンで聞く――つまりBluetoothレシーバーとして使えるのだ。

M0
本体下部にUSB Type-C端子とイヤフォン端子を装備

 また、どちらもPCとUSB接続することで、USB DAC(PCのオーディオデバイス)として動作が可能。PCに保存されたハイレゾ音源の再生ができるようになる。小型化したからといって多機能性は失われていないようだ。

M0
本体側面にmicroSDカードスロットがある。本体内にメモリーはないので、楽曲はカードに保存して再生する

 ストレージは外部メモリー(microSDカード)対応で、M1は256GBまで、M0は512GBまで利用可能。バッテリー駆動時間は、M1が9~10時間となっているのに対して、M0は15時間となっており、スペック面では新機種のM0が従来機のM1を上回っている。

初見では戸惑いそうな
ダイヤル&タッチモニターの操作性

M0
物理操作系は側面にあるダイヤルのみ

 本体には押し込みが可能なダイヤルが1つついているだけで、それ以外にボタン類はない。このボタンで電源オン/オフやボリューム調整、スクリーンロックができる。

 それ以外の操作(曲選択や曲送り/戻しなど)は、画面がタッチ式になっており画面上でできる。ダイヤルを押し込めば画面が消灯してスクリーンロックがかかるので、誤動作も防げる。

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トップメニュー。画面をスワイプすると楽曲表示や設定などのアイコンに切り替わる
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microSDカードのフォルダー階層を表示できる
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曲再生画面。ここでは曲送り/戻しと再生操作しかできないが……
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スワイプするとシークバーが表示され、早送りや巻き戻しが可能

 設定項目や曲ジャンルなどを選択すると画面が下の階層に移行するが、階層を戻るときは画面を右にスワイプし、トップメニューに戻るときは画面を長押しする。

 この操作はマニュアルを見ないとわからず「あれ、どうやってメニュー戻るんだ!?」と一瞬焦ったが、1回覚えてしまえば問題はない。

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イコライザー選択。「クラシック」や「クラブ」など16種類から選べる
M0
フィルターも「Linear Fast/Slow」「Minimum Fast/Slow」「Apodizing Fast1/Fast2」など豊富に選択できる
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USB接続の動作モードの切り替えのほか、スリープタイマーなど設定は豊富だ

 オーディオ設定は豊富で、イコライザーやゲイン設定、8種類のフィルター、ステレオの左右のバランスなどが調整できる。ただ、イコライザーはプリセットのみで、細かいカスタマイズはできないようだ。

 本体設定はDSDの出力モード(D2P/DoP)やUSB接続モード(DAC/ストレージ)の選択などができる。

2万円ウォークマンと音質を比べてみた

M0
ウォークマンとSHANLING M0。こう見るとM0はやっぱり極小だ

 音質については、SHANLING M1は手元にないので、ソニーのハイレゾウォークマン「NW-A35」と比べてみた。

 16GBストレージ内蔵モデルが実売2万円前後ということで、価格帯的には近い製品である。

M0
シュア「SE 112」

 試聴にはシュアの「SE 112」というイヤフォンを使用。結論から言うと、決して悪くはないのだが、低音の迫力などはウォークマンの方が上だと感じた。

 ハイレゾらしい精細感などは感じられるのだが、高域がやや弱く、全体的にパワーが抑え目な印象。ウォークマンの方が力強い音で好印象を持った。

 従来機のM1とは聞き比べていないが、M1を聞いたときに感じた驚きのようなものは感じなかった。インパクトという面ではM1よりも薄いかもしれない。

M0
パナソニックの「RP-HDE3」

 さて、ここでなんとなくイヤフォンを変えてみた。手元にあったパナソニックの「RP-HDE3」というイヤフォンでM0の音を聞いてみたのだ。すると、思った以上に迫力満点でインパクトのあるいい音になる。

 逆に、このイヤフォンでウォークマンの音を聞くと低音がこもった感じの音になり、むしろM0のほうがいい音に聞こえる。

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JVC「HA-FXH30」

 さらに、JVCの「HA-FXH30」というイヤフォンでも聞いてみたが、さらに解像感が上がった感じになる。低音はRP-HDE3のほうが響く印象だが、音の広がり感と細かい音の聞こえ具合はHA-FXH30のほうが向上するように感じた。

 そう考えるとM0のパフォーマンスは決して悪くはなく、イヤフォン選びが重要なのかもしれない。

 ちなみに、RP-HDE3とHA-FXH30の実売価格は4000円前後。M0と合わせても2万円しないので、これらの組み合わせならお買い得かもと思ってしまった。

USB DACとして使うにはドライバーが必要だが……

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PCと付属のUSBケーブルでつなげばUSB DACとして使える

 PCと接続することでUSB DACとして使えると前述したが、実はつなげただけでは動作しない。PCにドライバーをインストールする必要があるのだ。

 早速ドライバーをインストールしようと国内販売店である伊藤屋国際のサイトをチェックしたのだが、PC用ドライバーが見当たらない。

 本来であればドライバーが用意されるまで待つべきだが、筆者は中国のSHANLINGのサイトから直接ドライバーをダウンロードすることにした。

 なお、以降の記事内容は正式にサポートされている使い方ではないため、うまくいく保証は一切できない。実際に試す場合は自己責任となる。

 ダウンロードしたファイルはrar形式で圧縮されているのでこれを解凍。フォルダーの中にある「setup.exe」を実行してみた。しかし、日本語環境だからだろうか、エラーが表示されて実行できない。

 そこで、デバイスマネージャーから不明のUSBデバイスを探し出し、このデバイスのドライバーを更新。ドライバーは先ほど解凍したフォルダーを指定した。

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デバイスマネージャーで不明なデバイスにドライバーを割り当てた
M0
タスクバーでオーディオデバイスが選べる

 すると、デバイスが認識され無事オーディオデバイスとして使えるようになった。

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「foober2000」でDSDファイルを再生できるようにセットアップ。ちょっと面倒だ

 次いで、Windows 10で音楽再生ソフト「foober2000」をセットアップし、ハイレゾ音源を再生できるようにする。この作業も一苦労なのだが、過去の記事を参照しつつセットアップを完了。

 PC上のDSDファイルを再生してみると、問題なく聞くことができた。

 音質的には専用のUSB DACにはかなわないだろうが、それでもPCのイヤフォン端子で直接聞くよりも音が艶やかで肉厚となり、結構音質はよくなる(PCにもよると思うが)。

 加えて、192kHz/24bitのハイレゾ音源やDSD音源の再生も可能となり、USB接続中はプレーヤーへの充電も行なわれる。外ではポータブルオーディオプレーヤーとして、自宅に帰ったらPCのオーディオデバイスとして使うのもよさそう。

1万円台のハイレゾプレーヤーも
あなどれない性能になってきた

 ハイレゾ対応で1万5000円のデジタルオーディオプレーヤーは低価格な部類に入る。2万円以下のハイレゾプレーヤーの中には“ハイレゾ音源が再生できるだけで音はよくない”というものも昔はあった。

 M0に関しては最高の音質、とまでは言わないが、イヤフォン選びを間違えなければかなり満足のいく音質で音楽を楽しめると思う。ハイレゾ入門機としておすすめだ。

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