自殺未遂を繰り返す「苦登校」の後遺症、彼の心は誰が壊したか「今でも学校を見ると、恐怖感が蘇る」と明かす30歳代の男性。ひどいいじめに遭いながらも、学校を休むことができなかった「苦登校」の記憶に苦しめられている(写真はイメージです)

いじめで何度も自殺未遂
「苦登校児」の消えない苦悩

「今でも学校を見ると、恐怖感が蘇る」

 そう明かすのは、首都圏に住む30歳代男性のAさん。

 1990年代初頭に通っていた公立小学校で、クラスメイトと教師による「いじめ」によって、毎日泣いて帰る日々を送ってきた。

 それでもAさんは、我慢して学校に通い続けた。学校には行きたくなかったのに、親に言いくるめられて行かされる、いわゆる(不登校を許されなかった)「苦登校」経験者だ。

 登校前になると、下痢などの身体症状が出始める。翌年のクラス替えによって、Aさんは少し楽になった。束の間の平和な1年だった。

 ところが、次の年のクラス替えによって、再びAさんは「いじめ」に遭うようになった。登校時の下痢などの症状も再発した。

「学校では、苦しいことに耐えているだけだったので、成績も上がりませんでした。私は成績を上げるために、カフェインのドロップを取りながら、寝ないで勉強しました。そうしたらカフェインを摂取し過ぎて睡眠をとらなかったことが原因で、体調がおかしくなってしまったんです」(Aさん)

 Aさんへのいじめは、中学に入学してからも続いた。

 中学時代になると、「死にたい」と思う気持ちが強くなっていった。でも、いざ自殺しようと思うと、涙がポロポロと出てきて止まらなくなる。自殺しようとすると思いとどまる、そんな日々が繰り返されていく。

 高校に入ると、勉強のための睡眠不足からくる幻聴などに苦しみ、精神科クリニックに通った。その後、高校でもいじめが続いたため転校し、18歳で無事に卒業した。

 翌年、医療機関も変えてデイケアに通うようになり、Aさんは「初めて人間らしい扱いを受けている」と感じた。