「これは愛のあるいじりだから」「お前は女子力がない」…職場でこんな“いじり”を口にしたり、耳にしたという人は多いだろう。だが、このようないじりを受けて笑顔で受け流している部下や若手社員たちは内心、精神的な苦痛を強いられているかもしれない。(清談社 真島加代)

笑って受け流すも、内心は
深く傷ついている可能性も

男性ばかりの職場に過剰適応しようとする女性は多い
露骨ないじめと違って見えにくいが、被害者は心に大きな傷を負う”いじり”。男性社会に何とか適応しようと「何を言われてもいい系女子」を演じたあげく、精神的に追いつめられるなどのケースが少なくない(写真はイメージです)

 飲み会などの席で「○○さんに比べて女子力がないよな」「お前童貞だろ」などとその場のノリでからかう、“いじり”。口にする側はあくまで軽いコミュニケーションの一つだと思っているかもしれないが、いじられる側は、ひどい苦痛を感じている可能性がある。

「いじり被害者の中には、いじられたときに笑って済ます人が少なくありません。それはいじられて喜んでいるわけでなく、場の空気を凍らせないために愛想笑いをしているだけで、ストレスを感じている可能性が高い。一方の加害者側は、被害者の笑顔を見て『いじることを許された』と認識し、いじりの内容をエスカレートさせていく傾向があります」

 そう話すのは『上司の「いじり」が許せない』(講談社)著者の中野円佳氏。中野氏は、職場という閉鎖的な環境で起こる“いじり問題”に着目し、社会人でいじられ経験のある人々に取材を重ねている。

 中野氏がヒアリングをした被害者の中には「デブ」というあだ名を付けられ、飲みの席では「デブ、踊れ!」と宴会芸を強要された男性をはじめ、着ている洋服を毎日チェックされて「今日はずいぶんオシャレだね」など毎日コメントされるのが苦痛だったなど、さまざまないじりのパターンがあったという。

「容姿いじりやプライベートいじりなど、さまざまなパターンがありますが、それぞれに共通しているのは、加害者側が軽いノリのコミュニケーションとしていじっていること。加害者は、いじることで相手への親しみを表現している可能性があります」

 周囲には「上司にかわいがられている」「愛あるいじりだ」という印象を与えるため、露骨なイジメに比べて被害者のストレスが共感されにくいのも、職場でのいじりの特徴なのだとか。

「職場の場合は上司と部下、先輩と後輩など、相手との関係性によってストレスの度合いも違います。もちろん、いじられても言い返せる関係性や、被害者側も会話を楽しんでいる場合もあります。ただ、本当に大丈夫なケースと、いじりが苦痛になっているケースの区別はつきにくい。基本的にはいじり返せるような関係性にない相手にするべきコミュニケーション方法ではないんです」