◆あえて時間のかかることをやる

 ひと昔前の成長社会では、効率を重視して物事を処理する能力、つまり前述した情報処理力に長けた人が「できる人」だとされていた。だがこれからは、あえて面倒だったり手間がかかったりする道を選ぶ必要も出てきている。

 都会に住んでいれば24時間営業のコンビニが当たり前に利用できるし、通販サイトではおすすめの商品が自動的にピックアップされるなど、「超便利社会」がますます加速している。だが、その恩恵にあずかるばかりでは、本来持っていた創造性や遊び心がどんどん薄れてしまうのだ。

「時間をかけること」の一例として、ほしいものがあれば、完成品を買うのではなく、自分で作ってみるといい。著者の場合は、腕時計のデザインから始まった。さまざまな時計メーカーの資料を参考に、できるだけ実物に近い具体案を練り、縁のあった時計師に提示したところ、著者プロデュースの腕時計「japan」シリーズが誕生したのだという。

 今や大量生産ではなく個別生産の時代だ。専門的な技術や知識や生産手段がなくても、誰もが生産者になれる時代を生きている。不特定多数の消費者向けにつくられた完成品を買い急ぐのではなく、たっぷり時間をかけて、自分だけのものを手作りしたほうが断然楽しい。欲しいものを形にするため、あれこれ知恵を出す過程で、人に語れる物語も生まれるだろう。

一読のすすめ

 帯には「読むと元気が出る人生戦略論」とあるが、著者の圧倒的な経験談を読むと、逆に自信をなくしてしまう読者もいるかもしれない。だが、実は著者でさえ、ライフワークがはっきりしたのは50代になってからだという。要約では紹介できなかったが、序章では、45歳前後までいかに「中途半端な存在」だったかが赤裸々に告白される。だからこそ、彼がそこから脱するために実践してきた戦略が説得力を持つのだ。

 同じく、要約で紹介できなかった第3章では、40代に多い悩みに徹底的に答えてくれている。あなたもきっと、共感できる悩みがあるはずだ。

 あとがきにかえて、著者は大人の定義を見直そうと呼びかけている。70代まで働いて90代まで生きる社会では、「40歳成人説」くらいがちょうどいい。あまりに早熟に生き急いでも、やることがなくなってしまうのだから、これからは晩生(おくて)のほうがいい、と。こう言われると、人生の折り返し地点を過ぎた読者も、なるほど「元気が出る」だろう。

評点(5点満点)

総合4.0点(革新性4.0点、明瞭性4.0点、応用性4.0点)

著者情報

 藤原 和博(ふじはら かずひろ)

 教育改革実践家。元リクルート社フェロー。1955年、東京生まれ。1978年、東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任。メディアファクトリーの創業も手がける。1993年よりヨーロッパ駐在、1996年に同社フェローとなる。2003年、47歳のときに、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長に就任。以来5年間、校長を務める。2008年~2011年、橋下大阪府知事の特別顧問。2014年から佐賀県武雄市特別顧問。2016年より2年間、奈良市立一条高等学校校長を務める。

 著書に、『人生の教科書〔よのなかのルール〕』『人生の教科書〔人間関係〕』(いずれも、筑摩書房)など人生の教科書シリーズ、『35歳の教科書』(幻冬舎)、『坂の上の坂 55歳までにやっておきたい55のこと』(ポプラ社)、『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』(東洋経済新報社)、『10年後、君に仕事はあるのか?』(ダイヤモンド社)、『「毎日の悩みが消える」働き方の教科書』(電波社)ほか多数。詳しくはホームページ「よのなかnet」に。

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