もっとも、地方金融機関の現在の窮状の行政的責任を、森長官時代にばかり求めるのは、フェアではない。

 そもそも金融行政当局は、バブル崩壊後の不良債権が問題だった時期に、大手銀行をメガバンクにまとめて潰れにくい状況に持っていくことに注力したが、本来経営基盤が脆弱であるにもかかわらず、地銀を始めとする地方金融機関については、経営統合に導くなどの手当てが、「必要だが、手が回らなかった」課題であった。いわば、過去の金融行政の「やり残し」が地銀分野である。

 例えば、考えてみると、メガバンクにあって一方の収益を支える国際業務が不在の地銀こそ、より手厚い自己資本が必要なはず。だが、国際業務を手掛ける銀行よりも、国内に特化する銀行の必要自己資本比率を低く設定していたことは、奇妙だったように思う。

 森長官時代以前の地銀は、「過保護に放任」されてきた。そして、「手が回らなかった」時期から、随分と時間を空費して、森長官の時代を迎えることになった。

地方銀行が抱えるリスクの所在

 地方金融機関の業績悪化の原因については、「日銀の金融政策」と「地方の人口減少」が挙げられることが多い。

 二つのうち、日銀の金融政策は確かに少々、気の毒ではあった。長期金利のイールドまで固定するのではなく、もっと大胆に財政的な措置を使って、早くインフレ目標の「2%」を達成すべきだったと筆者は考える。

 一方、人口減少については、前々から分かっていたことであり、経営や行政の不作為は批判されて然るべきだ。

 とはいえ、ここまできてしまった現状にあって、地方金融機関のリスク要因は何だろうか。

 筆者なりに、順番をつけるなら、個別金融機関レベルでは、有価証券などによる資産運用のリスクの顕在化が最も心配だ。金融庁から見ても「過度なリスク」を取っている地方金融機関が多数あるということは、リスクの見えにくい(例えば時価評価を回避できる)運用などにあって、実質的に大きなリスクを取っている金融機関が少なくないことが想像に難くない。