金融庁が業務改善命令の矛先を向ける不正融資問題を招いたスルガ銀行金融庁は、業績低迷が著しい地銀と不正融資問題を招いたスルガ銀行に業務改善命令を出す構えだ Photo by Takahisa Suzuki、Takahiro Tanoue

多くの地方銀行が低金利環境に苦しむ中、業績低迷が著しい地銀に対して、金融庁が業務改善命令の矛先を向けた。一方、独自路線で収益を伸ばしたスルガ銀行も不適切な融資が発覚し、処分は免れない状況と、収益構造の転換をめぐり、地銀界に行政処分の嵐が吹き荒れようとしている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 田上貴大)

「本業が赤字ならば、時には痛みを伴ってでも事業のやり方を変えるのが経営の在り方でしょう」

 銀行界が新たな事業年度を迎えた今年4月、地方銀行の頭取が集まる会合にて、金融庁の森信親長官はこう力説した。

 長らく続く低金利環境により、地銀の業績はじり貧状態だ。昨年10月、金融庁は1年間の金融行政の進捗を「金融レポート」としてまとめたが、レポート内では、融資業務と金融商品の販売業務を銀行の本業とし、2017年3月期決算の時点で、この本業が過半数の地銀で赤字だと示した。

 森長官も、一時的な利益の穴埋めに走るのではなく、根本的な収益構造の転換を図ってほしいという考えを持ち続けていた。

 とりわけ今回、"痛み"を伴うというシビアな表現を用いたのはなぜか。それは、直後に各行が発表した18年3月期の決算で、さらなる低迷ぶりが数字に表れると見通していたからだといえる。

 最たる例が、純利益が33億円の最終赤字に沈んだ福島銀行だ。含み損を抱えていた有価証券の減損処理で19億円の損失が出たことと、貸倒引当金などの計上を含む与信関係費用が12億円の損失となったことが要因に挙げられる。