供給の伸びと需要の伸びが、偶然、同じ速度になるとは限らないので、需要の伸びの方が早ければインフレになって、財政金融政策で需要を抑制することになる。一方、需要の伸びの方が遅ければ、財政金融政策で需要を刺激することになり、景気が循環するわけだが、本稿では短期の景気循環の話は置いておくとして、長期的な経済成長の話に集中する。

 また、バブル崩壊後の長期低迷期の日本経済は、金利をゼロにしても需要が伸びず、需要不足から供給も伸びないという悪循環に陥っていた。これは、世界経済の歴史の中でも珍しい現象だったため、本稿ではこれについても取り扱わない。

 景気循環を考えず、そしてバブル後の日本のことを考えないとすると、供給力が伸びるほど経済が成長するということになる。供給力の伸びに需要が等しくなるように、財政金融政策で需要をコントロールするからだ。

成長率低下の一因は
前年の水準が高いこと

 手で畑を耕している農家は、生産性が低い。そこにトラクターが導入されると、農業従事者1人当たりの生産量が飛躍的に増え、生産性は一気に上がる。

 しかし、国内で消費される農産物の量は増えないとなると、農業に従事する人数は少なくてよくなる。すると、農業従事者が余るので、彼らは都市に働きに行き、都市で生産活動に従事するため、国全体としての生産量は増える。こうして経済が成長する。

 もちろん、都市でも針と糸で洋服を縫っていた工場にミシンが導入されると、生産力は飛躍的に高まるから、国民に多くの服が供給されることになり、国民生活は豊かになる。

 しかし、トラクターとミシンが行き渡ってしまうと、経済成長率は鈍ることになる。古いトラクターやミシンを最新式の物に入れ替えても、生産性は飛躍的には向上しないからだ。これが、経済成長に伴って成長率が鈍化する一つ目の理由だ。