1月18日に発表された中国のGDPの数値を見て、SMBC日興証券の肖敏捷シニアエコノミストは一瞬目を疑った。全国の実質GDP成長率に対してではない。天津が3.6%と全国を大きく下回る成長率となっていたからだ。
北京や上海は全国とほぼ同じ6%台後半の成長率を維持している中、同じ直轄市の天津は半分強の水準にとどまり、2016年の9%成長から急減速した。従来は成長のけん引役だった天津が「お荷物」になってしまったわけだが、市当局にそれを気にしている様子はない。市統計局は「経済全体が成長を維持し、開発の質は着実に向上した」とコメントしている。
背景には、習近平総書記が昨年10月の中国共産党第19回全国代表大会(十九大)で打ち出した、「経済成長の量から質への転換」という大方針がある。長年、中央政府が成長率の数値目標達成にこだわってきた結果、地方政府による野放図な投資やGDPの水増しが行われてきた。しかし十九大以降、質を伴わない量の追求は「悪」と見なされるようになった。その結果、天津のように水増しを告白する地方政府が相次いでいる。
量から質への転換を急いでいるのは中央政府も同じだ。17年の成長率は6.9%と7年ぶりに前年水準を上回った(図参照)。好調な世界経済を背景に輸出が伸びたこと、政府によるインフラ投資などが大きく寄与したかたちだ。