徴収の強化は根本的な解決にはならない

 以上をまとめると、ネット論客らが言うように、レコードやCDなどオールドメディアが衰退する中、新しい収入源として市民の愉しみの場をターゲットにしているという見立ては説明可能だ。

 同時にJASRACの行動は法的に合理性があり、感情論を抜きにすれば問題はない。事実、権利者からは総じて支持されている。著作権者の権利を合法的に最大限に行使している機能と実績は認めざるを得ない。

 これを踏まえた上で、あえて主張したい点もある。

 法に則り、適正な対象に分け隔てなく徴収を徹底するのは、ある意味公正ともいえるが、公平ではないかもしれない。この方法の延長ではいずれ限界に達する可能性がある。音楽教室のあとはどこが対象になるのだろうか。徴収額はJASRACにとってひとつのKPIだとしても、ただでさえ変化が激しい音楽・メディア業界。徴収額を軸とするビジネスモデルやスキームを変えていかなければ、業界も組織も長期的な成長は期待できない。

 また、著作権の制御権は原著作者にある。著作権は権利行使が行き過ぎると、著作物の流通を妨げる。特に現在、著作物を広く認知、普及させるには柔軟性も欠かせない。著作権というと、とにかく権利を主張し、無断使用を取り締まり禁止するものととらえがちだが、弾力性をもってして、利益や市場の最大化を実現できる権利である。弾力性を具現化する方法は、インターネットの登場以降、加速度的に発達し、現在に至っている。

 著作物を生かすも殺すも、原著作者の著作権に対する柔軟な理解と利用が不可欠だ。良くも悪くも日本らしい存在であるJASRACの構造や背景を知り、うまく利用することは、原著作者も、そのファンにとっても、よりよく著作物を楽しむことに繋がるだろう。

(参考資料)
http://www.jasrac.or.jp/news/17/0227.html
http://www.jasrac.or.jp/profile/outline/detail.html
2012年度事業報告
http://www.jasrac.or.jp/profile/disclose/pdf/2012/2012_report01.pdf
2011年度事業報告
http://www.jasrac.or.jp/profile/disclose/pdf/2011/2011_report01.pdf

(ITジャーナリスト・ライター 中尾真二)