ギラギラしていた吉沢亮の演技が「一歩引いてしまう感覚」を大事にするようになったワケ〈ばけばけ第94回〉『ばけばけ』第94回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて10年超えの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第94回(2026年2月12日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)

「もう死んでしまいます」

「すばらしい お似合いですよ、これで松江の冬を乗り切りましょう」

 錦織(吉沢亮)の献身。ヘブン(トミー・バストウ)にファー付きのあたたかそうなコートを着せる。

「特別にあつらえました」。お代は錦織持ち。

 ヘブンは熊本に行くつもりだが、ノーノーノーノーと有無を言わせない必死の錦織がいたましい。

 錦織のこの無理やりな言動にも頼みの綱があった。トキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)である。

 知事(佐野史郎)には、夫人のおトキが熊本行きを猛烈に反対しているので、彼女がいる限りは「松江を離れることはないかと」と自信満々に伝える。

 安堵(あんど)する知事。「君自身の立場のためにも」と意味深。それほど、帝大を出ていないのに出たことにして、教員免許もなく教師をやっていることはよろしくないことなのだろう。それはそうだ。現実でもよく政治家の学歴詐称が問題になる。

 その頼みのトキの状況に変化が?

 錦織はトキと書店で偶然出会う。トキは九州のガイド本を読んでいて、気づかれないように本の表紙を裏返して去っていく。

 事態は錦織に不利な状況へ進みつつあるようだが、彼は気づかず、せっせと虫の本を物色していた。

 錦織に待ち受ける悲しい未来が見えるようで、切ない。

 トキはその足で、雨清水家に。タエ(北川景子)が魚を焼いていた。

 手伝おうとするトキに「1人でできますから」と言いながら。あ! と不安を抱かせる。

「大丈夫よ」「大丈夫大丈夫」とトキに手伝わせない。

 そこに三之丞(板垣李光人)がよれよれになって帰って来た。

「もう死んでしまいます」
「なに、まだ昼ですよ」