アマゾンは、赤字でも自社のための投資をやめない
マーケットプレイスは、簡単にいうと楽天市場のような、アマゾンのサイトに出品できる仕組みだが、それを多くの外部事業者が利用しやすくすることで、消費者はより安いものを簡単に手に入れることができる。
マーケットプレイスの商品は、アマゾンが用意した物流システムを使うことが多いため、注文が増えれば増えるほど送る荷物をまとめることができ、物流費は下がる。
マーケットプレイスに参加する企業の中には、事業規模を拡大できたことで、アマゾンの提供する情報システムであるAWSを利用しはじめる企業も出てくる。
さらに仕入れのための資金が必要になり、これまたアマゾンが行っている融資サービスを使う企業もあるかもしれない。企業がアマゾンを一度利用し始めると、便利すぎて他のサービスも横展開で利用する可能性は大きい。
事業ひとつひとつの収益も大きいが、単独の収支だけで事業を展開しないところもアマゾンのすごみだ。
プライム会員のために、別事業で儲かったお金を投資
たとえば、「プライム会員」には無料配送サービスが提供される。プライム会員が買い物するたびに、アマゾンは運送会社に配送料を支払うことになる。場合によっては配送コストが会費収入を上回り、赤字になる可能性もある。
しかし、一個の配送は赤字でも、プライム会員はリピーターになり、まとめて発注することが増えるため、アマゾン全体で見ればプラスなのだ。ちなみに、プライム会員ではない一般ユーザーの年平均消費額は700ドル。これも決して小さくない数字であるが、プライム会員はその倍近い1300ドルの購買をしているという。
もちろん、単独の事業はそれぞれ個別に膨張を続ける。
クラウドサービスのAWSは、IT専業のマイクロソフトを抜き、ぶっちぎりのトップで世界シェアを独占している。アマゾンのAWSの責任者は、小売事業を補完する事業などではなく、いずれ小売りの売上高を抜くであろうと豪語している。
アマゾンの大きな特徴は、新しい事業を立ち上げるときに、赤字覚悟で投資をいわないことだ。
これは、明確なアマゾン全社での戦略である。
しかし、ベゾス自身もひとつひとつの事業がどこまで拡大するかは、もはやつかみきれていないのではないか。