
世界の中央銀行が参加する国際決済銀行(BIS)が公表した2025年の年次経済報告書は、米国の関税政策は貿易の分断を招き、経済成長を抑制すると警告。経済の不確実性の緩和や、金融・物価の安定には中央銀行の独立性が重要だと訴えた。前日本銀行総裁の黒田東彦氏が執筆するダイヤモンド・オンラインの連載『黒田東彦の世界と経済の読み解き方』の今回のテーマは、BISの役割。中央銀行総裁が定期的に集うBISと、国際通貨基金(IMF)や世界銀行との意外な違いとは?
FRB議長やECB総裁、中国人民銀行行長…
中央銀行のトップが意見交換するBIS
世界の中央銀行の総裁たちが定期的に集い、交流を深める場所がある。スイス北部の都市バーゼルに本部を置く国際決済銀行(BIS)である。
私は2013年3月~23年4月の10年間ほど日本銀行総裁を務めたが、年6回のBIS中央銀行総裁会議の約半分は出席し、残りの約半分は副総裁に出席してもらったので、おそらく、30回近く(ただし、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い20年はオンライン会議)は出席したと思う。
当時の米連邦準備制度理事会(FRB)議長だったジャネット・イエレン氏やジェローム・パウエル氏、欧州中央銀行(ECB)総裁のマリオ・ドラギ氏やクリスティーヌ・ラガルド氏、中国人民銀行行長(総裁)の周小川氏や易綱氏といった人たちと金融政策について意見を交換し、親しくなれたのは大変有意義だった。
また、私の日銀総裁期間中、BISの総支配人だったジェイミー・カルアナ氏やアグスティン・カルステンス氏には、BISの機能や仕組みについて教わることが多かった。
BISでは年6回、総裁会議を開催している。またBISの組織に関する決定を行う理事会や年次総会以外にも、意見交換を行う会議として、主要国中銀総裁による世界経済会議(GEM)や経済諮問会議(ECC)、全総裁会議(AGM)などがあり、貴重な意見交換の場となっている。
また、中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループ(GHOS)が必要に応じて会合し、金融機関を対象とした国際的なルールを策定するバーゼル銀行監督委員会への指示を行っている。