
トランプ関税の影響本格化で
半年程度で1.0~1.25%幅利下げ!?
4月2日、トランプ大統領が「解放の日」と称して異例の高率相互関税の具体案を発表して以来、世界各国はトランプ関税政策に振り回されてきたが、8月1日の新たな「交渉延長期限」ぎりぎりで日本を含め主要国との合意が成立し、経済見通しの不確実性はやや低下してきた。
ただし、カナダやブラジル、インドそしてスイスなどへの懲罰的関税や中国、メキシコなどとの交渉延長、そして日本にとっても自動車関税の15%引き下げも含めて合意がいつ実行されるかは、依然として不透明感が漂いはっきりしない点もある。
さらに米国雇用市場の急速な悪化が表面化、米経済減速、世界的な景気への懸念も強まり始めている。
「雇用ショック」を生んだ7月の米国雇用統計は、確かにビッグサプライズといえる。農業分野以外の就業者の増加が市場予想を大幅に下回ったうえ、6月の就業者も14万7000人の増加から1万4000人増へと修正された。これほどの就業者数の大幅な下振れは、筆者にも記憶にないものだった。
トランプ大統領はこの数値は「政治的操作だ」と激怒して労働統計局長にクビ宣言をしたが、関税の悪影響は米自動車大手の厳しい減益決算に見られるように、米国自身に降りかかり始めている。
こうした米国経済の景気悪化見通しに、市場では9月利下げが確実視されており、連邦準備制度理事会(FRB)は年内3回の利下げや来年前半の数回の利下げを予想する声も強まっている。すなわち「向こう半年程度で1.00~1.25%の利下げ」との読みだ。
だが、このところ金利上昇が目立つ超長期債や長期債の利回りが政策金利や短期債利回りに連動するとは限らないことには注意が必要だ。
コロナ禍対応などによる財政膨張の下で、主要国では財政の方が金融市場や金融政策を“支配”する状況が強まっているからだ。