アマゾンのビジネスモデルはローマ帝国!?
ベゾスは自社をロジスティクス企業と語る。ロジスティクスとは日本語では兵站である。兵站とは、戦場で軍の活動を維持するために必要な軍需品や兵のことであり、これらを前線に送るためのルートを確保すること、つまり物流網を持つことだ。兵站を確保した者は戦争に勝つ。
歴史上、この兵站を重視したのがローマ帝国だ。古代のローマ軍は「ローマは兵站で勝つ」といわれたほどだ。すべての道はローマに通じると豪語したほど、現代でも通用するほどの軍用道路を整備した。
アマゾンの場合、最重視するのが顧客の利益だ。その実現のためにあらゆる投資をして兵站として活用する。自前のトレーラーを持つなどの物流網の整備、クラウドサービスの開発と提供、送料無料、プライム会員、通販サイトで蓄積した買い物データ……。
アマゾンの圧倒的なサービス力は、顧客のための最強の兵站なのだ。しかも安価だ。ベゾスが自社をロジスティクス企業と呼ぶのはこうしたことからだろう。
国家の枠を超えた超国家的存在になり、いまだに膨張を続けるアマゾンは21世紀のローマ帝国といえるかもしれない。
ベゾス自身も、どこに向かうかはわかっていないかもしれない
ネット通販もクラウドサービスもAIスピーカーも、すべてのITという道はアマゾンに通じているのだ。そしてベゾス自身、どこまで「国土」が広がるのか、彼自身ももうロードマップを描けてないかもしれない。
創業から20年あまりでアマゾンはどのようにしてこのような「帝国」を築いたのか、そしてどこに向かうのか。
これを知ることは、現代人にとって非常に重要なことだ。アマゾンというひとつの組織を知ることは、「ECサイトでの小売業界を知る」といった小さなことではない。現代の先端のビジネスを知ることだ。
現代を生きるビジネスマンにとって、アマゾンほど興味深い企業はないだろう。アマゾンを研究することは、10年後に書かれる経営学の教科書を学ぶことと同義である。