「それぞれのプレーヤーが最適な行動を取っても、全体として最適にはならない」「プレーヤーにとっては、相手に協力するよりも、出し抜く(協力しない)方に魅力がある」

習近平とトランプ
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 米中の「関税引き上げ合戦」は、まさにこの構図といえるだろう。関税引き上げは明らかに景気の足を引っ張る。全体として見れば、関税を据え置くのが望ましいに決まっている。

 相手が据え置くときに、米国だけが引き上げると、大きなメリットをもたらす。自国だけなら“おいしい”のである。しかし、そうなると相手も黙ってはいない。中国も引き上げないとデメリットが大き過ぎる。かくして関税引き上げ競争に突入する。

「自らの支持層にアピールしたい」と強硬な保護主義に走るトランプ大統領、「弱腰との批判も出かねず、報復に走らざるを得ない」という習主席。こうした構図は、ゲーム理論の「チキンゲーム」「コミットメント」などの概念ですっきりと整理整頓が可能だ。

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 そんなゲーム理論は、経済学の枠を超え、現実への応用により目を向ける。政治・外交分野では、例えば核などの軍拡や軍縮をめぐる問題だ。ゲーム理論で政治・外交問題を研究する早稲田大学の栗崎周平准教授は、「平和問題は数値分析に基づき考えるべきで、もはや不可欠なツールだ」と説く。軍事力の在り方などをめぐっては、他国との安全保障などとの関係性を考えながら戦略を構築する必要があるからだ。

 ゲーム理論はむろん、ビジネスマン個人にも強い味方となる。東京大学大学院の柳川範之教授は、ゲーム理論を学ぶ大きなメリットとして、「自らの生き方やキャリアを戦略的に決めるツールとして知っておきたい」と言う。さらに「企業戦略でライバルと戦う際、基本的な思考の型を知っていないと戦略を誤りかねない」とし、これからの時代に勝ち残るためには不可欠なツールとの見方を示す。