皆さん、こんにちは。三井住友アセットマネジメント調査部です。毎週土曜日に「ビジネスマン注目!来週の経済、ここがポイント」をお届けしています。
さて、このところ、米国と中国の貿易摩擦問題が一段と激化し、連日紙面をにぎわしていることをご存じだと思います。米国政府は、7 月6 日に知的財産権侵害への制裁として中国からの輸入品340億米ドル分に25%の追加関税を発動し、中国政府も同様の報復措置を発動しました。さらに、米国政府は7 月10 日、中国からの輸入品2000 億米ドル分に10%の追加関税をかけるリストを発表しました。19日にはトランプ米大統領がインタビューで、中国からの輸入品に5000億米ドルの関税を課す用意があると述べるなど、米中の貿易摩擦問題はますます混迷の度を深めています。
こうしたなか、中国の株式市場や為替市場は、貿易摩擦問題が深刻化した6月以降、調整色を強めました。足元は反発していますが、上海総合株価指数は7月5日に約2年4ヵ月ぶりの安値をつけるなど大きく下落しました。また、人民元は対米ドルで7月25日に約1年ぶりの安値水準に下落しました。
これらの市場の動きは、米中貿易摩擦の激化で輸出が減少し、減速し始めた中国景気が大きく下振れするとの見方や、中国政府が輸出の減少を防ぐため人民元安を容認するとの思惑が反映されたものとみられます。また、中国株式市場の下落が加速したのは、6月以降、人民元が急落したことで、2015年8月に中国が人民元を切り下げたことを契機に、中国から資本が大量に流出し、世界的に金融市場が大混乱した「チャイナショック」が再来するのではないかとの懸念が強まったことも背景にあると思われます。
それでは、株式市場や為替市場が示唆するように、本当に中国景気は下振れリスクが大きいのでしょうか。また、中国当局は一段の人民元安を容認するのでしょうか。今回は、米中貿易摩擦の激化に伴い下落が続いている人民元が、再び「チャイナショック」を引き起こすかについて、考えてみたいと思います。
中国経済、「チャイナショック」当時との比較
まずは、「チャイナショック」の起きた2015年8月時点と現在の中国経済のファンダメンタルズを比較してみたいと思います。ここでは、経済成長率、景況感、物価についての相違点に着目しました。