パナソニック、ソニーなど日本を代表する大手企業が軒並み大赤字だ。少しずつ景気が回復していると言われても、なかなか実感できないのが実情だ。

 そこでちょっと視点をずらしてみよう。マクロ経済が低調なら、ミクロ経済、すなわちあなたの会社も低調になるのだろうか。そんなことはない。もしマクロとミクロが連動しているなら、低成長であるいま、どこの会社もダメになるということになる。

日本企業の忘れ物

 マクロ経済が低成長でも立派に業績を上げている会社はある。たとえセブン&アイグループやイオンなどの流通グループは最高益を計上している。震災などのマイナス要因からいち早く立ち直り、売り上げを回復させた。

 これを震災特需だと片付けてはいけない。これらの企業は、「己の欲せざる所人に施す勿(なか)れ」(論語)の精神で商売をしているのだ。

 この言葉は、「子貢問うて曰はく、『一言にして以って終身之を行ふべき者あるか。』子曰はく、『其れ恕(じょ)か。己の欲せざる所人に施す勿れ。」という中の一部だ。

 ひと言で終身行うことがあるかという問いに、孔子は「恕」、人を思いやる心だと答え、自分がして欲しくないことは、他人に対してするもんじゃないと答えるのだ。

 私的には人間と言うものは自己愛の賜物。他人のことなんかより自分のことが可愛くてしかたがない動物だ。それを克服して他人を思いやり、自分を愛するように他人を愛せれば、それが最高のことだと、孔子は言っているのだろう。

 これをビジネスの分野に応用すると、「売りたい物を売るのではなく、客が買いたいと思っている物を売る」、「自分が欲しくもないものを、他人に無理やり売るんじゃない」ということになりはしないか。