地点防衛用の「PAC3」も射程を30kmに伸ばした「PAC3MSE」に換装中で、これも1発10億円以上になりそうだが、1地点しか守れないことに変わりはない。

「イージス・アショアに何千億円も投じるよりは、イージス艦やPAC3が保有する迎撃用ミサイルの弾数を増やす方が合理的ではないか」とミサイル防衛関係の自衛隊上層幹部達に言うと、ほぼ例外なく「仰言る通りです」との答えが返ってくる。

「防衛能力の抜本的向上」は
全くのウソだ

 イージス・アショアは、秋田市の陸上自衛隊新屋演習場と山口県萩市のむつみ演習場に配備される計画だが、当面は迎撃ミサイルを各4発しか装備しないとされている。

 一方、地元に対する説明では、防衛省は「我が国を射程に収める数百発の弾道ミサイルが現実に存在している」としてイージス・アショアの設置の必要性を力説、「防譲能力の抜本的向上が図られる」と主張している。

 だが相手のミサイルが数百発もあるのに、こちらは僅か4発では「防譲能力の抜本的向上」は虚偽の宣伝と言うしかない。兵士に実弾4発を渡して前線に立たせるようなものだ。

 イージス・アショアの垂直発射機は24発が入るとされるが、将来、1発約40億円の迎撃ミサイル購入に1ヵ所で960億円、2ヵ所で2000億円近くを費やしても、数百発の弾道ミサイルに対しては焼け石に水であることは変わりそうにない。

 北朝鮮が保有する中距離弾道ミサイルは「ノドン」(推定射程1300km)が約300発と、米国、韓国の研究機関が推定している。他に「スカッドER」(同1000km)や「ムスダン」(同3000km以上)もある。

 それを迎撃するミサイルの命中率を仮に50%と楽観的に見ても、300発の弾道ミサイルに対抗するには少なくとも600発の迎撃ミサイルが必要で、それだけで約2兆4000億円になる。

 海上自衛隊はこれまで4隻のイージス艦がハワイ諸島のカウアイ島から発射される標的の弾道ミサイルに対し1発ずつ「SM3ブロック1A」を発射、3回は撃破したから「命中率は75%」と言う。

 だがこのテストでは標的の発射の時間帯や発射地点、標的が落下する海域、標的の加速性能、などのデータが分かっていて、それを入力して待ち構えているのだから当たって当然なのだ。

 野球の練習で「センターフライ」と叫んで野手にとらせるシートノックに似ている。だが実戦では相手がいつ、どこから、どこへ発射するか、通知してくれることはない。