あるいは、最後に残った2社が公正取引委員会の目を盗んでカルテル(これ以上値下げしないとの約束)を結ぶ可能性もある。あるいは、最後に残った2社のいずれかが倒産するまで、死闘を繰り広げるかもしれない。

 余談だが、どこまで安くなるのかは業界のコスト構造による。路上で営業しているマッチ売りの少女2人で安売り競争をしても、赤字にはならない。仕入れ値より安く売ることはないからだ。しかし、2人が店を借りてマッチを売っているとすれば、話は変わる。店の家賃もマッチの価格に上乗せして売らなければならなくなり、相手が安く売ってきたら、対抗値下げをせざるを得ないからだ。

 相手が仕入れ値プラス1円で売るとして、対抗値下げをすれば当然赤字になるが、対抗値下げをしなければ家賃分だけそっくり赤字になってしまうので、1円でも赤字が小さい方がマシだからだ。

 このように、設備や装置があると過当競争が生じやすい。離島に2件だけガソリンスタンドがある場合を想定してみよう。ガソリンスタンドは、耐震構造のタンクなどに巨額の投資が必要だが、それでも仕入れ値プラス1円までは値下がりする可能性があるわけだから、その競争は熾烈だ。ただ、生き残った方は独占利潤が期待できるから、戦いがいは満点だが。

カルテルを結ぶのは
それほど有効ではない

 とはいえ、カルテルを結ぶことは、実はそれほど有効ではない。相手がカルテルの約束を破ったら損をしてしまうので、互いにカルテルを守ろうとしないからだ。

 しかし、明日以降のことを考えれば、違う発想も浮かんでくる。A社の社長は、カルテルの契約を結んだ際、B社に対して以下のような宣言をするのだ。「今日、わが社は約束を守って値下げをしない。そして、御社の値札を見にいく。今日、御社が値下げをしていなければ、わが社は明日も値下げをしない。しかし、今日御社が値下げをしていれば、わが社も明日から対抗値下げをする」と。