旧本社より手狭ながら
共用スペースは2倍に

 新本社オフィスの広さは、約3600坪。これは大手町ビルヂングと比べて2割ほど狭い。それにもかかわらず、共用スペースは2倍以上に拡大し、全体の3分の1を割いた。

「ボーダーレス」と「ソーシャライジング」という二つのコンセプトの下、オフィス全体を一つの巨大パーク(公園)に見立てて、各階をつなぐ二つの内階段を設け、部長以下の管理職を含めた社員にグループアドレス制(固定席を割り振らず一定の範囲内で空いた席を使用するオフィス形態)を採用。役員の個室廃止にも踏み込んだ。

 靴を脱いで横になってくつろげるスペースなど、フロアやエリアごとに工夫を凝らした空間デザインを施すことで、社員が横へ縦へと行き来したくなり、自然に社員間のコミュニケーションが生まれるオフィス空間を目指したという。

「20~30人ほどのコミュニティーが自然に形成されやすいレイアウトになっている」と須藤は言う。

チーム最年少の社員が
社内のまとめ役に

 三菱地所が移転に際して導入したのは、“箱”の斬新さだけにとどまらない。仮眠制度や朝食を無料で食べられるカフェテリアなど、社員のモチベーションを高める仕掛けに加え、最新テクノロジーも採用。グループアドレス制と共有スペースの拡大で生じる社員の居場所を把握しづらくなるというデメリットを解消するための、誰が社内のどこにいるのか一目で分かる位置情報システムや、指紋認証による入退室管理システムだ。

「社員へのアンケート調査では、90%がオフィス設備への満足度が上がったと答えています」

 そう言ってほほ笑むのは、若手中心の移転プロジェクトチームの中でも最年少27歳の三菱地所総務部ファシリティマネジメント室の佐々木詩織だ。周囲に「彼女がいなければ移転の結果は異なっていた」と言わしめるほど、社内の意見調整に八面六臂の大活躍だった。

 旧態依然とした社風が強いとされる三菱地所。新オフィスの具体案が示されるたび、農民一揆のように「止めに行こう!」という声が各部署から上がったという。