a三菱地所本社移転の立役者となった佐々木詩織(三菱地所総務部ファシリティマネジメント室)(右)と須藤晶子(メック・デザイン・インターナショナル デザイン・ソリューション1部オフィスユニットデザイナー)

 グループでゆったり座れるソファにおしゃれな本棚、随所にある観葉植物。そしてスケルトン天井……。そこでコーヒーを飲みながらパソコンを広げる人々は、東京・代官山や表参道のカフェにいるのではない。ここは日本を代表する老舗企業の本社オフィスだ。

「どこでも場所を選ばずに働ける時代に、オフィスの存在意義とは何か。長い間悩んできましたが、その答えがつかめた気がします」

 今年1月、15年ぶりに本社を移転した大手不動産、三菱地所。築60年の「大手町ビルヂング」(東京都千代田区)から、2017年に竣工した最新ビル「大手町パークビルディング」(同)の3~6階に居を移した。

 1937年に設立された三菱地所は、これ以前に2度の本社移転を経験している。その理由は建物の老朽化による建て替え。必要に迫られての住み替えだった。ところが、今回は事情が異なる。それは単に最新オフィスビルへの移転というだけにとどまらない。話題に上ったのは、その最先端のオフィス環境と、大手不動産では初という顧客など外部からの見学ツアー開催だ。見学者は今年中に5000人を突破する勢い。新本社は、三菱地所の主戦場であるオフィスビル事業の“実験場”であり、また新たな営業ツールなのだ。

 執務フロアのデザインを担当した三菱地所子会社、メック・デザイン・インターナショナルのデザイン・ソリューション1部オフィスユニットデザイナー、須藤晶子は、転職1年目にして任された大仕事を冒頭のように振り返った。

「フェイス・トゥ・フェイスからしか得られないものは多い。今回の仕事は、より活発なコミュニケーションが生まれるオフィスが10年先にも求められるという答えを教えてくれました」(須藤)