あらゆる業界にデジタライゼーションの波が押し寄せる中、企業はデジタルトランスフォーメーション(DX)の旗を振り、さまざまな変革を推進しようとしている。では、企業はDXの先に目指す姿として、どのような企業像を描いているのだろうか。デジタルネイティブ企業にそのヒントがある。

デジタルディスラプターの台頭

 さまざまな業界においてディスラプター(破壊者)が台頭している。特にデジタル技術を武器とするデジタルディスラプターは、これまでとまったく異なるビジネスモデルで既存の業界構造や商習慣に風穴を開け、既存の大企業の優位性を大きく揺るがす存在となる。米国のアナリストであるジェイムズ・マキヴェイ氏は、その著書『DIGITAL DISRUPTION - 破壊的イノベーションの次世代戦略』(実業之日本社)の中で、デジタルディスラプターというのは、あらゆるところから現れ、デジタルツールやデジタルプラットフォームを活用して顧客を奪い、業界にイノベーションを起こすと述べている。

 例えば、民泊仲介サイトを運営する(エアービーアンドビー)Airbnbは2017年8月、全世界での登録物件数が400万件を突破したと発表した。これは、マリオットインターナショナルやヒルトン、インターコンチネンタルといった巨大ホテルチェーントップ5の合計総客室数を上回る規模であり、世界最大の宿泊提供企業になったことになる。しかし、エアービーアンドビーは客室を持っているわけではない。自社では敷地や建物などの資産、フロント業務や清掃のための人員を抱えることなくサービスを提供しており、非常に身軽でスピード感に満ちている。デジタルディスラプターは、既存企業が長年培ってきた成功体験や伝統、歴史を意味のないものにし、これまでの優位性と考えられてきた既存資産、既存事業、従業員を足かせに変えることもあり得る(図1)

 また、デジタルディスラプターの脅威は、既存企業1社に対するものではなく業界全体や周辺の業界にも影響を及ぼす。エアービーアンドビーに代表される宿泊施設のシェアリングエコノミーは、ホテルにリネンサプライを提供する業者、警備会社、レストラン、食材を提供する業者、宿泊予約サービス業者など周辺のさまざまな業界からもビジネスを奪う可能性がある。

 デジタルディスラプターの出現を「それは海外の話だ」「我々の業界とは異なる」といった論調で対岸の火事と捉える向きもある。業界や事業領域によって脅威に対する温度差は確かに存在する。

 国内企業では、デジタル技術を活用したイノベーションの重要性がようやく意識され始めたとはいえ、企業内に十分浸透している状況とはいえない。グローバルな競争に晒されていなかったり、具体的なデジタルディスラプターが明確に表れていなかったりという業界では、あまり切迫感がないのかもしれない。しかし、冒頭で述べたように、デジタルディスラプターは、あらゆるところから現れる可能性があり、それは海外企業かもしれないし、国内のベンチャー企業や異業種からの参入者かもしれない。

デジタルネイティブ企業と戦うには <br />その企業像の違いを知る必要がある