中長期的に国内市場の縮小が避けられないなか、日本企業は自社が成長を続けるための「糧」を、海外市場に求めざるを得なくなった。そんな経済状況を反映して、近年、日本企業による海外企業の買収が増加してきている。しかし、事情のよくわからない海外での買収にはリスクが多く、二の足を踏んでいる関係者も多い。日本企業が海外買収に成功するためにはどうしたらいいのか。世界30ヵ国に展開する大手経営コンサルティングファーム、ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)で日本支社代表を勤め、「結果主義」の経営戦略を数々の顧客企業にアドバイスしてきた火浦俊彦氏が、海外買収の醍醐味と日本企業が陥りがちな「7つの落とし穴」を、詳しく指南する。
売上・利益共に成長している企業は
他社と比べて海外買収に積極的
デフレ不況から抜け出し切れず、世界に類を見ないスピードで少子高齢化が進む日本では、中長期的に国内市場の縮小は避けられないと見られている。今や日本企業は、自社が成長を続けるための「糧」を海外市場に求めざるを得なくなった。
そんな経済状況を反映して、近年、日本企業による海外企業のM&Aが増加してきている。成長戦略の一環として買収を活用することは、成長、利益共に継続的な拡大を求められる企業にとって不可欠だ。
ベイン・アンド・カンパニーが行なった調査によれば、2000~2010年の間に年平均で売上・利益共に5.5%以上、かつ自らの資本コスト以上に成長した企業は、調査対象全体の9%しか存在しないことがわかった。実は、それら9%の企業の約9割が活発に買収を行なっており、さらにその中の約半数が年間1回以上のペースで買収を行なっているのが現状だ。
このことからも、日本の成長企業にとって海外買収の重要性が高まっていることは、一目瞭然だ。しかし、頭では理解しても、事情もよくわからず、海外で買収に積極的に乗り出そうとする企業は少ないのではないだろうか。
実際、日本の上場企業の中で、年1回以上のペースで買収を行なう企業は全体の9%程度に過ぎず、50%を超える欧米企業と比べて極端に少ない。グローバル化が急速に進むなか、海外戦略で出遅れることは、自らの成長の可能性をみすみす見逃しているようなものだ。裏を返せば、日本企業にとって、海外買収をテコに高い成長を実現できる余地は、海外企業よりもはるかに大きいことになる。