発売2ヵ月で10万部を突破したベストセラー『転職の思考法』著者の北野唯我さんと、NewsPicksBook編集長として数々のヒット作を手がけながら、8/28には自らの著作『死ぬこと以外かすり傷』(発売前にして3刷3万部、Amazon総合ランキングでも1位を獲得)を書き上げた幻冬舎の箕輪厚介さん。
今最も勢いのあるアラサービジネスマン二人が、「個人の価値が問われる時代」をテーマに対談!その様子を全3回にわたってお送りします。
最終回では、キャリアのプロの北野さんが『転職の思考法』をベースに箕輪さんのキャリアを分析しました。
構成:篠原舞 撮影:池田実加(ともに箕輪編集室)

キャリア形成の源泉は「飽きる力」

北野:キャリア形成の観点からみても、箕輪さんはユニークですよね。『転職の思考法』では、自分のマーケットバリュー(市場価値)を高めるために「20代は専門性、30代は経験、40代は人的資産でキャリアを作れ」と書きました。「専門性」は誰でも学べば獲得可能であり、年を取るほど差別化しづらくなる。一方で、『経験』は汎用化されにくい。だから、20代は専門性で、30代以降は経験をとりにいけ」と。でも、箕輪さんは20代のうちからいきなり見城徹さんや堀江貴文さんなど大物を口説いて経験を取りにいった。

箕輪:確かに。まず一番難しい経験を取りに行きましたね。

北野:それって、箕輪さんが天才だからできたんですか?それとも意外と誰でもできることなんですか?

箕輪:いや、絶対誰でも出来る。要はやるか、やらないか。僕、経験がないことが一番得意なんですよね。集中力が上がるし、それこそ無知だからこそ熱狂できる。初めてのことだから勉強しなきゃいけないし、成功させるためには仲間も募らなきゃいけないから四六時中そのことについて考える。そうすると集中力と自分の能力が異常にレベルアップして、どうにか成し遂げることができるんです。でも慣れてしまったことにはワクワクしない。最近はもう本を作ることに飽きちゃった(笑)。

箕輪厚介(みのわ・こうすけ)
1985年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、2010年双葉社に入社。ファッション雑誌の広告営業としてタイアップや商品開発、イベントなどを企画運営。広告部に籍を置きながら雑誌『ネオヒルズ・ジャパン』を創刊しアマゾン総合ランキング1位を獲得。2014年、編集部に異動。『たった一人の熱狂』(見城徹)、『逆転の仕事論』(堀江貴文)を編集。その後幻冬舎に移籍し、2017年にNewsPicks Bookを立ち上げ、編集長に就任。『多動力』(堀江貴文)、『お金2.0』(佐藤航陽)、『日本再興戦略』(落合陽一)、『人生の勝算』(前田裕二)などを編集。創刊1年で100万部突破。また1300名の会員を擁する日本最大級のオンラインサロン「箕輪編集室」を主宰。既存の編集者の枠を超え、様々なコンテンツをプロデュースしている。

北野:以前、ある有名な起業家の方と対談した際におっしゃっていたのが「ある程度以上賢い人にとってリスクは一個しかない。それは『飽き』です。だから『飽き』をいかにしてコントロールするかが大事だ」と。けれど、箕輪さんはその「飽き」こそが原動力となっているんですね。

箕輪:まぁ飽きなかったら絶対うまくいきますね。でもすぐ飽きちゃうんだよね。だからこそ、自分がヒリヒリするくらい怖いことに飛び込むしかない。

北野:確かにこの本を読んでいて、箕輪さんはこの本を最後の本にするつもりなんじゃないかって思ったんですよ(笑)。「もう俺の言いたいことはすべてここに記したぞ!」と。

北野唯我(きたの・ゆいが)
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。その後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年ハイクラス層を対象にした人材ポータルサイトを運営するワンキャリアに参画、サイトの編集長としてコラム執筆や対談、企業現場の取材を行う。TV番組のほか、日本経済新聞、プレジデントなどのビジネス誌で「職業人生の設計」の専門家としてコメントを寄せる。2018年6月に初の単著となる『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』を出版。

箕輪:まさに。だからこれはある意味「遺作」ですよ。NewsPicksBookっぽいものの最後に自分の本を編集して終わるっていう。

北野:箕輪さんはこれからどうするんですか?最近だとHATASHIAI(素人異業種格闘技イベント)への参戦に向けてめちゃくちゃトレーニングしてますよね(編注:この対談後8/4に水道橋博士と戦った箕輪さんは見事に勝利を収めた)。

箕輪:自分でもよくわからないんだけど、ホリエモンに「出なよ」って言われて「面白そう!」って思ったから出ることにしたんですよね。俺がホリエモンを「すげえな」と思うったのは、前ホリエモンがR-1選手権に出たとき。担当編集だからいろんな人に聞かれたんですよ。「箕輪さん、ホリエモンってR-1でどんなネタをやるんですか?」って。で、僕は「AIに大喜利でもさせるんじゃないですか」とか答えてたの。そしたら本番見て驚いたんだけど、ホリエモン、小学生のカッコして「昭和か!」って思うくらいど真ん中のベタな笑いを追求してたわけ。もう、それ見て自分が恥ずかしくなって。いつから俺はそんな大人びた、つまんない発想をするようになったんだって。

北野:おもしろい!

箕輪:ホリエモンは「年に3回、まわりが意味わかんないっていうような、ビジネスに全然関係ないことをあえてやる」って決めてるらしいんです。さっきの「飽き」の話でいえば、ホリエモンが強いのは飽きる前にまったく別のことを始めてるんですよ。だから僕も編集者として本を作るだけじゃなくってとにかく新しいところに飛びたい。そうやって自分がいつもワクワクしてたら、編集者としてもまだまだ成長できるし、自分という土からまだ見たこともないようなものが育ってくる気がしていて。

北野:編集者は、やめるんですか?

箕輪:いや、「本の編集者」という枠にはとらわれないと思うけど、編集者はやめないですね。でも目の前のことが分からない状態じゃないと面白くないから、常にゼロに戻そうとは思ってます。

北野:箕輪さんは「緊張と緩和のバランス」が偏ってるんですよね。本では「今の仕事をやめるべきか」を判断する基準として紹介したんですけど、すべて「その人にとっての面白さ」を決定づけるのは緊張と緩和の最適なバランスなんです。たとえばゲームでも、弱い敵ばかりだとすぐ飽きてしまうけど、逆に強い敵ばかりだと疲弊してしまう。そのバランスが緩くなりすぎたり、キツくなりすぎているなら環境を変えたほうがいいと。箕輪さんはその「最適なバランス」が、99%緊張で、緩和は1%もいらないタイプ。

箕輪:そう。だからテレビとか出るのも目立ちたがり屋とかじゃなくって、やっぱ経験したことないから。緊張したりすることのほうが楽しい。HATASHIAIの試合も最初は震えるほど興奮し緊張するけど、慣れてきたら絶対に飽きるわけよ。そしたらもっと高いレベルに行きたくなる、違うことをやりたくなるっていうその繰り返しだよね。

理論派は『転職の思考法』、実践派は『死ぬこと以外かすり傷』

北野:ここまでお話してますます確信したんですけど、『転職の思考法』『死ぬこと以外かすり傷』という二冊の本は、「山の登り方」が違うだけでどの山を登ろうとしているか自体は似てますよね。『転職の思考法』に書いた考え方が、箕輪さんにはもともとおおよそ備わっていて、たまたま編集者という仕事に出会って4年くらい走り抜けてきたらこういうことになったという具体的な話が『死ぬこと以外かすり傷』だと。

箕輪:僕の編集する本はとにかく背中を押すための本なんですよ。よく「NewsPicksBookは著者が変わっても言っていることはいつも一緒」と言われるんだけど、それは真実だと思っていて。NewsPicksBookだろうがトークイベントだろうがなんだろうが、もう出ている情報ってだいたい一緒なんですよね。

北野:情報はすでに世の中に出切っていて、それ自体の価値は下がっているということですか?

箕輪:そうです。この前、落合陽一さんと小泉進次郎さんが共同で企画した「平成最後の夏期講習」っていうイベントに参加して実感しました。あらゆる分野の最先端の著名人が集まってディスカッションを交わして日本の課題の解決策を発表していったんだけど、そこで出てくる情報自体は「すでに知られていること」だったんですよね。つまり、ある程度知識がある人はもう全員同じ情報を持ってるから、後はもう行動に移すだけ。そのイベントの最後に落合さんが「今日出てきたアイデアををやるかやらないかが重要だ」と言ってましたけど、本当にそのとおり。僕が編集した本も、今回書いた本も「とにかく動け!」と背中を押そうと思って作ってます。

北野:なるほど。『転職の思考法』も「行動することへの恐怖」を取り払うためにつくった本なんです。人は「未経験のことは怖い」と感じるから、物語という形で追体験してもらうようにしたし、「判断基準がわからないと動けない」から思考法を伝えた。

箕輪:たしかにこの2冊は一見正反対なのに、どちらも「行動しよう」というゴールは一緒。

北野『転職の思考法』が理論面から『死ぬこと以外かすり傷』は実践面からアプローチしてるんですよね。僕と箕輪さん、それぞれの個性が出ているので、どちらの本が自分に合うかは2冊読んで確かめてみたらいいんじゃないかと思います。

箕輪:この2冊、相性めちゃくちゃいいですからね!最初、北野さんは僕と真逆のタイプかと思ったけど、意外と本質は一緒だったので面白かったです。ありがとうございました!

北野:またぜひ話しましょう!

(完)