2012年12月の政権発足以来、6年近くの長期政権となった安倍首相だが、足元の自民党では所属議員の失言が止まらない。安倍一強政治のなか、なぜ自民党議員の失言が相次ぐのか。その背景について、ジャーナリストの鈴木哲夫氏に聞いた。(取材・文/清談社)
失言議員続出の裏で
ささやかれる「質の低下」の原因
今年5月、加藤寛治衆院議員が「(女性は)3人以上の子どもを産んでほしい」と発言、6月には穴見陽一衆院議員が国会で、がん患者団体の代表に「いいかげんにしろ!」と驚くべきヤジを飛ばした。さらに7月には、杉田水脈衆院議員が「LGBTは生産性がない」と月刊誌に寄稿。いずれも大きな批判を浴びた。
まさに失言ラッシュだが、なぜこんな現象が起こるのか?鈴木氏によると、第一の要因として、現在の政界に緊張感がない点が挙げられるという。
「昨年の衆院選で、自民党は284議席を獲得して圧勝しています。そのため当面、衆院選はない。与党に対峙するはずの野党も、合流や再編の話はあるが、選挙は遠いので急ぐ必要には迫られていない。こうした政治状況もあり、与野党ともに緊張感がないから、議員たちの言葉や政治行動にも緩みが出てくるわけです」(鈴木氏、以下同)
そして、もう1つの要因として、鈴木氏が警鐘を鳴らすのが政治家の質の低下だ。
「現行の小選挙区比例代表制度になってから20年以上がたちますが、制度に合わせて、必要とされる政治家像も変化しています。政治家の質が低下しているのは、選挙制度の影響も強いといえます」
1994年、細川護煕内閣のもとで政治改革四法が成立し、それまでの中選挙区制から、小選挙区比例代表並立制へと変更された。
以前の中選挙区時代は、ほとんどの選挙区の定数が3~5。そのため各選挙区には、同一政党の候補者が乱立し、与党対野党という単純な構図ではなく、同じ選挙区内で自民党公認の候補者同士が激しく争うというのは当たり前だった。だが、選挙制度の変化により、選挙の風景は一変したという。