自民党第3派閥・竹下派は幹部会を開き、9月の自民党総裁選に事実上の自主投票で臨むことを決めた。竹下亘総務会長は派内の支持候補の一本化を目指したが、調整がつかなかった。
禅譲を期待して不出馬の岸田文雄氏
「負け戦」覚悟の石破茂氏と参院竹下派
竹下派には衆参両院の55人の議員が所属しているが、34人の衆院には茂木敏充経済財政・再生相ら安倍晋三首相に近い議員が多く、安倍首相支持での一本化を望んだ。これに対して、21人の参院は、来年夏の参院選に向けて党内議論の活性化を名目に石破茂氏支持を主張していた。竹下会長は衆参の個々の事情を容認すると決めた。
一方、安倍首相の有力な対抗馬とみられていた岸田文雄政調会長は、総裁選不出馬を決定した。岸田政調会長は、「今の政治課題に、安倍総理を中心にしっかりと取り組みを進めることが適切だと判断した」と不出馬の理由を語った。
岸田派内は、若手を中心に出馬を促す主戦論と、ベテランを中心に今回は出馬せず、次回の総裁選挙で安倍首相からの禅譲を目指す慎重論で割れており、岸田政調会長は、総裁選への出馬を慎重に検討してきた。結局、総裁選に出馬しても勝機が全くみえないことから、勝てない戦を避けて、安倍首相からの禅譲に望みを託すことに決めた。
だが、安倍首相の出身派閥である細田派に続いて、麻生派、二階派が既に支持表明した後に遅れて支持表明をしても、安倍首相側は「今さら支持すると言われても、遅すぎる」と冷淡だ。禅譲どころか、総裁選後の人事で岸田派が冷遇される可能性もある。
安倍首相は、既に国会議員票の3分の2以上を固め、地方票も着実に伸ばしている。圧勝で自民党総裁に「3選」されることが確実となった。唯一の対抗馬である石破氏は手も足も出ない状況だ。
だが、本稿は「負け戦」であることを承知しながら、それでも総裁選を行い、党内議論を起こすことが大事だと、あえて安倍首相に対抗する立場をとる、石破氏と参院竹下派にエールを送りたい。