6月19日、これまで長い間沈黙を守ってきた加計学園の加計孝太郎理事長が動いた。午前11時から地元・岡山で急きょ記者会見を開いたのだ。唐突に開かれた会見の舞台裏では、いったい何が起きていたのだろうか。(政界ウォッチャー 大山 糺)
「突然の記者会見」は国家権力による
用意周到な世論コントロールだった
前日18日朝には、大阪・北部で震度6弱の大地震が発生し、この日の夜には、サッカー日本代表の初戦が控える状況で、抜き打ち的に開催された記者会見。国政を揺るがす重大案件に関連する記者会見にしては、異例の条件の下での開催であった。
会見の開催が記者クラブに通達されたのは、当日の午前9時で、会見の開始時間はわずか2時間後となる午前11時。さらに会場は、岡山市の加計学園本部。入場は、岡山に本社や支局がある報道機関で構成される「岡山交通・大学記者クラブ」の加盟社の記者のみに限り、在京メディアの記者の参加は一切認めないというものだった。
まさに異例づくめの記者会見の背景には、権力がマスコミを使って世論を恣意的に誘導しようとするコミュニケーション戦略(以下コミ戦)が垣間見える。
「コミ戦の観点から考えると、あの記者会見は、日時、場所、記者の選別、会見内容を含めて相当用意周到に練られた会見だと思いました」
記者会見の印象をそう語るのは、外資系の広告代理店代表だ。また特に注目すべき点は、サッカー日本代表の試合と同じ日に行った点だという。ビッグイベントがある日に、あまり報道されたくないニュースをぶつけるのは、よくある手法のように思われるが、なぜサッカーの試合だったのだろうか。実は、テレビ局が莫大な放映権料を支払うワールドカップは、権利関係がガチガチで、放送する上でさまざまな制約があるのだ。
「例えば、ワールドカップの開催期間中、フジテレビの夕方のニュース番組『プライムニュース』では、連日、番組終了間際に10分ほどサッカー特集を放送していました。日本の敗退後も放送は続きましたが、これには事情があります。日本戦の中継権を獲得する代償として、ニュースの枠でもワールドカップを取り上げることが条件になっているんです。こんな状況なので、急きょ大きなニュースが飛び込んできても、サッカーの時間は飛ばしにくく、放送枠の融通が難しい。そんな事情を考えて、サッカーの試合がある日にぶつけてきたわけです」(同前)