中国人が集うところには
必ず中華料理店ができる

 いずれの店舗も少しずつ距離が離れているため、「街全体として」は池袋駅の北口や西川口のような「ディープさ」や「怪しさ」は感じられない。これらの店に共通するのは「軽食」やラーメンなどの単品であって、大人数で集う中華料理ではない。それに、早稲田通りの古本店や地元の店のほうが多いため「チャイナタウン」と呼ぶのはまだ少し早いような気もする。

 だが、高田馬場の中国人向け予備校で講師を務める知人の中国人はこう指摘する。

「店舗の数ではもちろん池袋などには遠く及びませんが、早稲田通りを歩いている人数だけ見たら、中国人が圧倒的に多くてびっくりしませんか。池袋の中華にはわざわざ食べに行く中国人がいますが、ここでは学校の行き帰りに立ち寄って食べていく中国人が中心。一口にチャイナタウンといっても、これまでにない、まったく新しい形態のチャイナタウンといっていいと思いますよ」

 そういえば、私が以前取材した中国人向け予備校もこの近くにある。

 中国人の間で最も人気の高い早稲田大学のお膝元であり、日本語学校と並行して通うのにも便利なので、この辺に中国人向け予備校が集中しているのだ。日本語学校の授業は午前の部と午後の部があるが、予備校の授業はたいてい午後6時ごろから夜までと週末に集中する。「授業前の一杯のラーメン」が故郷の味ならば、彼らのモチベーションもぐっと上がることだろう。

 前述の中国人によると、最近では日本語学校や大学を卒業後、日本で就職したり中国に帰るのではなく、日本で「経営管理ビザ」を取得して、在日中国人向けの飲食店や雑貨店の経営に乗り出す若者も増えているという。資金は中国の親から出してもらうケースが多いそうだ。これまでにない、まったく新しい傾向だ。

 在日中国人の人口が100万人に近づこうかという時代、「同胞」をターゲットにするだけでも、ビジネスが成り立つようになってきたということなのだろう。

 中国人が住む、あるいは集うところには必ずといっていいほど、彼らの胃袋を支える中華料理店ができる。これは世界共通だ。

 西川口が中国人住民のための生活チャイナタウン、池袋や新宿が中国人一般客のための商業チャイナタウンだとしたら、ここは中国人学生のためのチャイナタウンというべきなのか。学生街・早稲田に、かつてない新しい波が押し寄せてきているのは確かだ。