PL脳に蝕まれているのは経営陣だけではない。製造、営業といった現場からメディアや投資家まで、多くが売上高や利益が前年を上回ったかどうかばかり気にしている。

 そんな発想だから、PL脳の持ち主は、ビジネスを進める上でBS(貸借対照表:Balance Sheet)の視点を持っていないことが多い。簡単に言えば、その事業のために株主が出したお金をはじめどれだけ資金を突っ込んだのかを気にしないということだ。

リスクを取って投資をする
積極的な姿勢を欠いてしまう

 資金調達にはコストがかかる。金利5%でお金を借りてきて、利益率1%の商売をする。このように単純化して表現すれば「ばからしい」と思えるかもしれないが、実はあなたも知らぬ間にそうしたばからしい行為にまい進している可能性がある。企業の現場はおろか、経営者ですらBSを意識することが少ないからだ。

 首都大学東京大学院でファイナンスを教える松田千恵子教授は、「日本企業の経営陣は“売り上げを伸ばしたら褒められる”という期間が人生の間であまりにも長かった。だから“売り上げ以上にお金を投資したらまずい”ということですら、意外にも分かっていない」と明かす。

 さらに、特集内でも再三にわたって紹介するが、企業経営の究極の目的は現金を増やすことだが、実はPLからは正確な現金の動きを読み取れない。

 本当の現金の動きが分かるキャッシュフロー計算書の公表が2000年代に義務付けられたのも、PLのデメリットを克服するためだ。にもかかわらず、それを理解していないPL脳の経営者がいまだに多く、弥縫策に動きがちだ。

 企業の資金調達手段が多様化し、メーンバンク制が崩壊して久しいし、キャッシュフロー経営が叫ばれてから20年近くたった。それでも、日本企業の経営者、現場の認識はほとんど変わっていないのだ。

 そして、PL脳の最も危ない側面は、大きな構想を描き、リスクを取って投資をするという、積極的な姿勢を欠いてしまうこと。

 分かりやすいのが研究開発費や広告宣伝費の削減だ。それらを行えばPLの利益は瞬時に向上する。