今回の自然教室では、NASVAの職員9人が同行した。中には社会福祉士、作業療法士の資格を持った人もいるが、職員全員が入社後にカウンセリングを学びながら「傾聴」や「相手の気持ちに寄り添う」といったスキルを身に付けてきた。「転勤も多いので、子どもたちの成長をずっと見守ることはできず、長くても3年程度しか子どもたちと接することはできませんが、少しずつ成長していく姿を見ると安心します」という北嶋さんは、子どもたちから一番人気のある職員だ。キャンプ中、常に子どもが1人か2人、北嶋さんにぶら下がっていた。

「これ、お父さんが
買ってくれたんだよ」

「NASVA(ナスバ)だから、ナスがいっぱい入ったカレーだな」

 男性職員が子どもたちと火を起こしながら、おじさんジョークを言い放つ。

「やだよ。僕ナスはいらない」

 ナス嫌いの子がうちわで火をあおりながら、真剣に反論する。その後ろのテーブルでは、別の子どもが女性職員と一緒に、涼しげな顔でナスを切っていた。4つのグループそれぞれが10人分程のナスカレーを作り、5~6人で完食した。

 その夜の宿に着くと早速ビーチボールの投げ合いと、座布団投げが始まった。埃の舞う屋内から子どもたちを外に連れ出し、水風船の投げ合いで濡れた服のままスイカ割りが行われ、その横では、職員が夕食のバーベキューを煙まみれで準備する。

 スイカの種飛ばしと夕飯を終え、ビンゴゲームで景品をゲットした子どもたちが風呂の準備に取りかかる。

「これ、私が小さい時お父さんが買ってくれたんだよ」

 今もまだ小さな小学生が、亡き父に買ってもらったというバッグを誇らしげに掲げて見せた。

「かわいいね~」

 女性職員の1人が反応したが、他の子どもたちはみんな黙ってバッグを見た。

 自然教室の間、事故に遭った家族のことを口にする子どもはいない。しかし、ふとした時に、片親がいないことを思い出させる場面があるという。