ファーウェイの深セン本社から車で約2時間の所にある東莞市の松山湖工場。その敷地内に、「サイバーセキュリティー検証ラボ(ICSL)」がある。ここでは、スマートフォンから通信機器まで、全てのファーウェイ製品のセキュリティーチェックが行われている。ファーウェイ製品が、特定の国家・集団に悪用されていないか。国家機密情報や技術情報などのデータへの不正アクセスがないか──。

深セン本社が手狭になり研究開発部門は引っ越し中。ディズニーリゾートと見紛うような洋風建築が特徴(右上)。敷地内には本物の電車が走行している(左上) Photo by Fusako Asashima

 まさに今、米国は「ファーウェイを通じて中国共産党が米国政府や米国企業の情報を盗んでいるのではないか」と疑っているわけで、ファーウェイからすれば、身の潔白をいかに証明するかという難題を突き付けられている。

 今回、この微妙なタイミングで、ICSLへ潜入することができた。ただし、写真撮影やパソコン、レコーダーの持ち込みは一切禁止という条件付きだ。ラボ内には約140人のスタッフがいるが、各自がパソコンの画面に向かって検証作業に没頭しており、広い室内は静まり返っている。

(1)ファーウェイ従業員が本社入り口を通過しただけで、カメラの画像が解析され、本人の所属、階級などがディスプレーに表示される。(2)写真撮影不可、録音不可の条件で潜入できた「サイバーセキュリティー実証ラボ」。(3)街中に設置された監視システム。通行人の年代や服装、二輪・自動車の車種やナンバーなどの情報が一気に解析される。(4)(5)昨年オープンした「ワイヤレスXラボ」。手作り感があり、まるで大学の研究室のようだ。ファーウェイが得意な「5G」技術を下地に、全産業でどんなケースが実用化できるのかを開発する。上海ラボと結んで、模型自動車の遠隔運転や医療機器の遠隔操作などを試すことができた。(6) 「ワイヤレスXラボ」のアレックス・ワン・ディレクター。熱心なプレゼンテーションは2時間に及んだ 拡大画像表示

 2013年にICSLが設立されて以降、2万7261バージョンもの検証作業が実施されてきたという。特徴は、ICSLが製品ラインから完全に独立した組織であること。ラボチームは、サイバーアタックなどの問題解消が見えない場合は、開発部門に対して「No Go(開発の中止)」や「Reject(開発のやり直し)」を言い渡す絶大な権限を持っている。実際に、13年以降では76件もの「No Go」案件が発生した。

 厳格なセキュリティー管理を自負するICSL責任者は、米国によるファーウェイ排除の着地点についてどう考えているのか。

 「われわれは、技術的に検証可能なことは全てやっている。でも、最初から(国家の安全保障を脅かす存在として)黒だと決めつけている相手に対して、それは事実ではないと証明することは非常に難しい。技術で解決できることではありません」──。

 言葉を選びながら、そう回答した。ICSLの設備・スペースを通信事業者テレフォニカに開放するなど、顧客企業自身で検証作業できる仕組みを取り入れ、検証の中立性を重んじている。あえてこの時期にメディア取材を受け入れるのも、そうした姿勢をアピールする意図があるのだろう。