深セン市の人件費、家賃はますます高騰し、製造業は労働者の確保が難しくなり、移転する会社も出てきた。今も世界中の製造業が集積し、珠江デルタが「世界の工場」となっていることが、深センから多くのハードウエア企業が誕生するきっかけとなったが、製造業はいつまで深センにとどまるのか。(高須正和:メイカーフェア深セン/シンガポール)

ジェネシスの工場
深セン市宝安区にあるジェネシスの工場。フル稼働で人手が足りない状況

もう労働者が採用できない
工業地帯も都市化へ

「本当はあと30人ぐらい採用したいが、労働者が集まらない」

 深センに工場を構え、日本向けのICT機器を製造するJENESIS(ジェネシス)の藤岡淳一社長は語る。同社は100人に満たない規模ながら、日本向けのタブレット製造台数ではここ数年ベスト10に入り、タクシー会社の車載端末やドライブレコーダー、最近では翻訳機など、多くのICT機器を手掛けている。

 1000~数千といった少ロットから製造を請け負う同社では、ラインの組み替えが頻繁に発生するため、他の工場より多くの熟練工を抱えている。秩序だって整頓された同社の工場は従業員に人気の職場で、離職率は、一般的な中国の製造業とは一線を画す低さだ。それでも、ここ数ヵ月は労働者の確保に苦しんでいるという。

「当社の工場は日本向けの小ロット多品種生産なので、他の工場よりは熟練工の割合が多い。期間限定の臨時工に比べて、長期雇用の工場労働者が採用しづらくなっている」と藤岡社長。

 ジェネシスのここ数年の業績は上り調子で、取材した日もラインはフル稼働していた。以前の深センなら、そうした景気のいい工場には残業代を目当てに労働者が集まってきたが、ここ数ヵ月はどうも様子が違うという。

「臨時工の給与も上がっていて、かつちょっと年がいった人とか、レベルが下がっている。臨時工の給与を熟練工に比べて極端に上げたり、レベルの低い人をラインに入れると、今の形では操業しづらい。会社全体としては余裕があり、労働者の賃金を上げることは可能だが、それでは問題解決につながらない。これまであまりなかったケースだ」と藤岡社長は語る。