要約者レビュー
「金融資産、1億円」。多くのビジネスパーソンが目標としつつも、実現は難しいと感じている額ではないだろうか。これを「ビッグデータとAIで実現できる!」と高らかに宣言するのが、本書『Yahoo! JapanのビッグデータとAIが教える21世紀の投資戦略』を著した岡田克彦氏だ。
岡田氏は複数の金融機関でトレーダーを勤めた後、ビッグデータを金融分野に応用する研究者となった異色の人物である。研究を株式投資に活用するためベンチャー企業を設立した彼のもとに、ヤフーから提携の誘いが舞いこんだ。「ものは試し」とヤフーが収集しているビッグデータを株価予測に使うと、精度が段違いだったという。
ヤフーの傘下に入り、同社のビッグデータをすべて活用できる立場を得た岡田氏だったが、彼が着目したのは株価の動きそのものではなく、その裏にある人間の心理だ。たとえば相場の格言のひとつである「五月に売れ」を検証したところ、株価の動きや新聞記事の論調も年の前半は強気、後半は弱気の傾向があるとハッキリ見てとれた。相場は空気や雰囲気に大きく影響されるのだ。このことから株価が実力とかけ離れたときに売り買いすれば、高い確率で収益を上げられると著者は主張する。