実際に大衆にそう感じさせる根拠はあるのだということを、「反安倍」陣営は直視しないと作戦を誤る。大衆を「宣伝をうのみにする愚者」と見下して、上から目線で啓蒙しようとすると、一層、反発を招くからである。

 民主党政権時代まで低迷した就業者数は、安倍政権発足とほぼ同時に増加に転じた。賃金の上昇は平均すればわずかだが、初任給(特に高卒)やアルバイト時給などは、やはり安倍政権になるとほぼ同時に増加に転じている(図表4)。

新規学卒者初任給の推移厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より筆者が作成 拡大画像表示

 平均すれば実質賃金は減ったが、それは主に消費税が上がったせいで、自民党といっしょにそれに賛成した旧民主党系への支持には大衆の怒りがつながりにくい。

 民主党政権時代まで職がなかったのに職を得た人や、以前より多少ともまともな職場に移れた人の安堵感は大きいだろう。不況に戻ればまた元のもくあみかと恐れる彼らの気持ちに思いを致さなければならない。

 リーマンショック後の大量の失業や倒産、所得の崩壊は、麻生政権と日本銀行の直接の対応ミスだけでなく、非正規化や規制緩和など弱肉強食の小泉改革の矛盾の現れだった。

 だからこそ有権者は民主党政権を選び、この苦境からの脱却の期待を託したのだった。東日本大震災に際しても、国の財力のすべてを懸けて力強い生活復興がなされることを人々は望んだはずだ。しかしこれらの期待に応えることができなかった旧民主党への人々のトラウマは大きい。

 それを踏まえて作戦を立てないとだめだ。