情報伝達は相手任せではダメ

 じつは、掲示物のなかには、きわめて重要で必ず社員に伝えるべき情報と、そうでないものとが混在している。
 情報の種類が多いと、重要な情報がそれほど重要でもない情報のなかで埋もれてしまう。

 本社から発信された掲示物を貼る役割の職位の人間、すなわち駅長、運転区長らにすれば、本社から送られてきた情報は、とりあえず漏れなく現場の社員たちに、と考えるのだろう。

 伝わることの定義を、相手が受け取った情報の内容を一応認識するまでとするなら、伝えておこう、ではなく、情報を提供しておこう、というところか。

 情報をきちんと理解し、実行に移すかどうかは受け手の意欲や努力や責任感に委(ゆだ)ね、本社からきた情報をとにかく提供することだけはしておこう。概ねそういうことだ。

 だから彼らは、毎日次から次に届く情報をそのまま掲示板に、重要度や緊急度に関係なく貼りつけた。

 掲示板を見るひとがおそらく認識するだろう、理解してくれるだろう、実行に移してくれるだろうと、あいまいな期待を抱くしかない。