中島 全ての企業がそうだったわけではありませんが、その時代の企業の総務部は、総会屋を企業への貢献度に応じて値踏みし、この人にはいくら、この人にはいくらと適正額を見極めて支払うことが重要な仕事だったくらいです。

 しかし、この1997年の事件の発覚以後、1999年に金融庁は金融検査マニュアルを作成し、金融機関の「お金の出入り」や経営行動をチェックするようになりました。これは反社会的勢力との決別という意味で大きな一歩となりました。

 そして、2000年には、雪印の低脂肪乳などによる集団食中毒事件が発生しました。この時点で、企業の不祥事対応として、新たに消費者問題もクローズアップされてきたといえるでしょう。

 さらには、ホリエモンこと堀江貴文氏率いるライブドアが、2005年にフジテレビ傘下のニッポン放送に買収を仕掛けたことが話題を呼び、「会社は誰のものか」という議論が現実的に行われるようになりました。株主価値経営という概念もこの頃から一般に浸透し始めたと思います。なお、従来からあった会社法の内部統制に加えて、2008年に金融商品取引法にも内部統制の項目が加わりました。

「コンプライアンス=法令遵守」ではない
世間の良識に合わせるもの

秋山進
秋山進(あきやま・すすむ)
プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役

秋山 コンプライアンスという言葉もずいぶん一般的になりました。ところで、先生は「コンプライアンス=法令遵守」ではないと、20世紀からずっと言い続けてこられましたね。

中島 コンプライアンスは世間の常識、良識に合わせる、世間の期待に応えるもの、といったほうが正しいと思っています。16年前には大勢は「コンプライアンス=法令遵守」という解釈でした。その流れに反するのはとても勇気が要りました。あるセミナーで「コンプライアンスは法令遵守ではない」と話したら、受講しておられたある大手企業の社長さんから「法令遵守でいいんじゃないですか?」と言われたこともあります。孤軍奮闘していましたね(笑)。

 ある企業の副社長が「コンプライアンスを法令遵守とするのは誤訳だ」と言い切ったとき、我が意を得たりと思いました。初めて仲間ができた気分でした。そもそも英語の「コンプライ(comply)」は「合わせる」という意味です。法令さえ守ればいいということではなく、法令は守って当然。法的にぎりぎりセーフであっても、世間から非難されるような良識や常識を欠くことはしない、というのが今の時代のコンプライアンスだと思います。法令違反はしていないから問題ない、というのはもはや言い訳になりません。