そうは言っても、「V字回復は、熱海だからこそできたことだ」と思う方もいるかもしれない。しかし著者によると、熱海が衰退したのも、その他の温泉観光地が衰退したのも、同じ理由によるものだという。それならば、本書で紹介される著者らの取り組みは、他の街にも応用が可能だといえるだろう。ビジネスの手法でまちづくりをするひとつのモデルケースとして、ヒントが満載の一冊だ。(池田明季哉)

本書の要点

(1)人口の減少、高齢化率の上昇、空き家率や生活保護率の高さ、出生率の低さ、未婚率の高さ、未婚率、40代の死亡率の高さなど、熱海は日本がこれから直面する問題を先取りしながら衰退した。
(2)熱海再生の一歩としてまず重要視されたのは、地元の人が熱海の魅力を知ることと、熱海に対するネガティブなイメージを払拭することだった。
(3)ゲストハウスを経営し、宿泊者が自然と熱海の街に出て行く仕組みをつくった。それによって宿泊者と住人との交流が生まれ、ファン化を促進することができた。

要約本文

◆衰退しつつあった熱海
◇熱海は50年後の日本の姿

 立地に恵まれ、名の知れた温泉街であるにもかかわらず、熱海は多くの課題を抱えている。そして、熱海で起こっていることは、今後他の地域でも起こることが予想されている。

 まず人口の減少である。熱海の人口は、1965年をピークに、50年以上にわたって下がり続けている。次に、高齢化率の上昇だ。日本の高齢化率は27%だが、熱海ではすでに45%に達している。毎年1%ずつ上昇を続けてもいる。

 空き家率も課題だ。日本全国の平均は13%だが、熱海の空室率は24%に昇る。しかもこれはリゾートマンションの空き部屋や空き別荘を除いた数である。それらも含めれば、熱海の空き家率は50%を超えるだろう。

 生活保護率の高さや出生率の低さ、未婚率の高さ、40代の死亡率の高さにおいても、静岡県内で1位2位を争う状況だ。熱海は、日本がこれから直面する課題を先取りしていると言える。