区を隔てればまったく別の場所
市区町村のキャラが立つ神奈川
「横浜の横浜です」
出身を聞かれたらそう答える、と教えてくれたのは30代の男性。昨年実家を出るまで、生まれも育ちも横浜。実家は横浜駅から徒歩圏内だという。男性によれば、「マジのハマっ子と言えるのは、横浜駅に歩いていける人だと思います」。冒頭の「横浜の横浜」は、「横浜(市内)の横浜(駅周辺)」の意味なのだ。お酒を飲むことが好きで「裏横の飲み屋コミュニティが自分の生活の中心」と話す男性にとって、「地元」とはこのエリアのことを指しているようだ。「裏横」こと裏横浜とは横浜駅東口の高島・平沼・戸部エリアのことで、小ぢんまりとした個性あふれる店がそろう。裏原宿、奥渋谷などの横浜版と考えればいいだろう。
同じ横浜市でも区を隔てればまったく別の場所、という認識だが、これは何もこの男性に限った話ではない。
横浜には全部で18の区がある。「ザ・横浜」として思い浮かべるような観光の人気スポット、山下公園や中華街、赤レンガ倉庫などがあるのが中区。近年急激な再開発が進んだみなとみらい21は中区と西区にまたがっている。この2つの区が上位にくるのは間違いないようだが、そこから先はさまざまな主張がある。「横浜カースト」と検索してみれば、格付け争いの一部を垣間見ることができるだろう。
神奈川はその広さと人口の多さからか、県のくくりよりも市区町村ごとのアイデンティティのほうが確立していると言われる。横浜の人と川崎の人は「地元が一緒」とは、つゆほども思っていないし、横浜市内でも中区と青葉区では完全に別エリアと言えるほどの隔たりがある。